「想定外の失敗」から学んだこと
失敗の種類は小さなものから大きなものまでじつに多種多様です。中には痛みの少ないものもありますが、そういうのはたいてい、手抜きやインチキなどを原因とする、経験する必要のない失敗です。そういうものでも扱い方次第で、その人を成長させる学びの機会にできるのが失敗の面白いところです。
とくに仕事や日常の中にある「ヒヤリとした」「ハッとした」という経験は、些細なことでも大切にしたいものです。その時点では取るに足らない小さなものが、大きな失敗の予兆であることもあります。こういう体験をしたときには、最悪の状況を想像しながら、自分の考えや行動のいたらなさを見つめたり、改める機会にするといいでしょう。それが案外、将来に起こり得る大失敗の回避につながったりもします。
失敗の多くはだれかが予想している形で起こりますが、まったく予期せぬ場所やタイミングで、予期せぬ形で起こることがときどきあります。これを「想定外の失敗」と言います。失敗の中でも一番対処が難しく、これまで多くの実例を調査しながら対処法を検討し、得られた知見を発信し続けてきました。
じつはそこで学んだことが、冒頭の質問への私なりの答えになります。ただし、質問の内容を「失敗への対策としてやっておくといいこと」と「年代別に心がけておきたいこと」というふうに少しアレンジさせてもらいます。
それぞれの答えは、「引き出しを広げて、自ら考えて行動することを心がけること」と、「若い頃は前者に注力し、ある程度年をとってからは後者の力を磨くのを意識すること」となります。
想定外の出来事を前に動けなくなる
想定外を原因とする失敗は前述のように、起こることを前提にしていない、そのための対策を用意していない状態で起こります。備えをしていない中で、想像していないことが起こったときにどうなるかは自明の理です。たいていは、なにもできずに手をこまねきながら、ことの推移を見守るしかなくなります。大失敗に至る典型的なパターンの一つで、2011年の東日本大震災の福島第一原子力発電所の事故がまさしくそうでした。
こういうときに求められるのは、状況を見ながらその場で対処法を考えて実行することです。「そんなの当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、これがじつにたいへんなのです。
日本の社会では往々にして「やるべきこと」が決められていて、そこから外れることは「やってはいけないこと」「許されないこと」とされています。大きな組織ほどこの空気に強く支配されているので、想定していないことが起こったときには現場で「思考が停止したようにまったく動くことができない」となってしまうのです。

