「去るもの追わず」の姿勢

そして60代以降の人間関係においてもうひとつ大切なことが、「去るもの追わず」の姿勢です。

人生のステージが変われば、かつて親しかった友人とも自然と距離が生まれることがあります。興味や生活のリズムが変わる、住まいが離れる、価値観にズレが生じるといった変化は、どれも避けられないものです。

そうした変化に対して無理やり関係を維持しようとすると、かえってエネルギーを消耗してしまいます。そうした変化を自然に受け入れ、「今の自分」に合った関係性を築いていくほうが、心にも余裕が生まれます。

私自身もかつて長くワイン会を主催していましたが、今は事情があり中断しています。ただし、「またやりたい」という声があれば喜んで開催しますし、声をかけてくれる人とは今でもつきあっています。

過去の関係にこだわるのではなく、今の状況に応じて自然体でつきあっていく――そんなスタンスが私にはしっくりきます。

定年を過ぎた年配の男性は、砂浜でリラックスして趣味を楽しんでいます
写真=iStock.com/yoshiurara
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思い出やかつてのつながりに固執せず、今、無理なくリラックスしてつきあえる相手を大切にする。

これこそが60代以降の人間関係で意識しておきたいポイントであり、人生の後半を豊かに生きるための支えになってくれるのです。

利害関係でつきあってもいい

それから、よく「心から信頼できる親友がいない」とか「損得勘定なしでつきあえる人が少ない」という声を聞くことがありますが、それは当たり前のことです。

そういう深いつきあいができる人はごくわずかで、むしろそういう相手が1人でもいるのなら、それはとても恵まれていることだと思います。

あとは自分にとって「メリットがあるかどうか」でつきあっている人も多いはずです。それはけっして悪いことではありませんし、人間同士の関係に「利害関係」が入り込むのは自然なことです。

ここでいう「メリット」とは、物質的なお金の貸し借りなどということではなく、「頼みごとがしやすい」とか「相談に乗ってもらいやすい」「一緒に旅行に行って楽しい」など内面的な充足感をもたらすものです。

誰だって、一緒にいて不愉快になる人間や、自分にとって都合の悪い人間とはつきあいたくないものです。居心地の良さや安心感、楽しさ、そして頼りになるかどうかなど、何かしらの「利得」や「プラス」があるから、つきあっているわけです。

たとえば、医者や弁護士の友人がいれば有益な情報を教えてもらえたり、いざというときに相談に乗ってもらえたりすることもあるかもしれません。