タッチを超えるSuicaの使い道

【田中】改札の「タッチ」という当たり前を超えるわけですね。

【喜㔟】はい。2万円の上限も、先ほどのコード決済やビューカードと紐づけて、30万円程度まで利用可能にします。事前チャージも、カードの与信枠と連携することで不要。まず、この3つの不便を超える。

その先に、Suicaの新しい当たり前をつくります。高輪ゲートウェイのレジデンスに住む方の睡眠情報や健康情報をSuicaに集約すれば、快適な睡眠をリコメンドしたり、体調に合わせたお食事を提案したりできます。駅を出た情報が伝わると、家でお風呂を沸かしたり、宅配荷物がちょうど届いたりするんです。

【田中】Suicaルネッサンスの背景には、JR東日本の経営哲学の大きな転換があると見ています。御社の経営ビジョン「勇翔2034」では、従来の「安全第一」から、「安心」そして「感動」へと価値がシフトしている。マズローの欲求5段階説で言えば、低次の「生理的欲求(移動したい)」や「安全欲求」から、高次の「自己実現欲求(自分らしく時間を使いたい)」へと進化しているのではないでしょうか。

日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授
画像=プレジデント公式チャンネルより
日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授

「安全」の主語は鉄道会社、「安心」は利用者

【喜㔟】その通りです。「安全第一」は設立当時からの原点ですが、今はグループを挙げて「究極の安全」を追求しています。安全に絶対はありません。ただ、われわれはプロですから常にゼロを目指します。

今回の新しいビジョンでは、「安全」という言葉を「安心」に置き換えました。安全はオペレーションに携わる側から見た言葉ですが、お客様の視点から捉え直すと、やはり安心なんです。安全の先に安心があるのではなく、究極の安全に取り組むことによって、お客様に安心を感じていただけるということです。

【田中】「安全」の主語は鉄道会社、「安心」は利用者。この違いは大きいですね。さらに「感動」まで目指している。

ビジョンの中心にある「当たり前を超えていく」は、感動を生む条件そのものです。期待を超える、当たり前を超えるから感動が生まれる。