「首都圏~青森の移動に一晩」かけるワケ
【喜㔟】「当たり前」には2つの意味があります。一つは、お客様や地域の皆様がJR東日本グループに抱いている「ここまでの会社」というイメージを超えていくこと。もう一つは、社員一人ひとりが自分たちの仕事に対して無意識につくっている制約や垣根を超えていくこと。この内と外、2つの当たり前を超えて、安心と感動をお届けしたいんです。
【田中】その象徴となるのが、27年度に運行予定の新たな夜行特急列車ですね。速さではなく、時間を楽しむ旅の提供。
【喜㔟】個室タイプの寝台で、東京を夕方以降に出て、青森に翌朝に着くような列車です。ゆったりと夜を過ごし、まさに時間を楽しんでいただく。逆説的にビジネスにつなげていけると考えています。
【田中】移動の会社ではなく、「人の時間をつくる会社」になるんですね。効率性や移動時間の短縮だけでなく、移動の前後でいかに豊かな時間を過ごせたかに着目されている。まさに自己実現を支えるインフラへの進化です。
逆説②「高輪ゲートウェイは不動産開発ではない」
【田中】もう一つの逆説が「高輪ゲートウェイは不動産開発ではない」。
【喜㔟】オフィスビルを並べれば収益は最大化できます。しかしレジデンス棟も学校も病院も複合的な文化施設もつくりました。
われわれが目指すのは、100年先を見据えて心の豊かさをつくる実験場です。キーワードは「心の豊かさ」と「実験場」。あそこに集うスタートアップや国内外の企業、アカデミズム、住む方、オフィスワーカー――そういう皆さんと一緒にイノベーションを起こし、社会実装できるレベルになったら、社会に広げていく。課題が生まれたら、また高輪に戻っていく。
【田中】自己実現を支える場への進化ですね。駅そのものが再定義されている。
【喜㔟】そうなんです。Suicaルネッサンスを進めると、改札の概念が消えます。駅ソトと駅ナカの境界がなくなり、街の延長線上に駅がある。駅のホーム上にクリニックや教育機関をつくり、エンターテインメント施設もつくっていきたい。
お客様の生活を起点にして、お客様が集まる駅空間をデザインする。「Beyond Stations」と呼んでいます。
【田中】鉄道ネットワーク型まちづくり「J-TOD」の実験場として、高輪で実装したものを地方の駅へ水平展開していく。
【喜㔟】高輪はあくまで実験場であって、ここで得た知見やノウハウをネットワーク全体に展開していく。駅のあり方を変えれば、地域のあり方も変わっていく。その可能性を追求していきたいと思っています。

