組織の成長に関する「ペンローズ効果」

さて、圧勝した高市政権は、このまま快進撃を続けるだろうか。自民党が一強すぎることや、この圧勝が「独裁」を生むのではないかという懸念もありうるだろう。

筆者の専門は政治ではなく経営組織論であるので、組織の話をしたい。エディス・ペンローズ(1914~1996)という経済学者がいる。『企業成長の理論』(1959年初版)という書籍で有名で、本のタイトルの通り、企業組織の成長の研究をしていた学者だ。

彼女の著名な業績のひとつが「ペンローズ効果」で、「ある期に成長を達成した組織は、その次の期の成長を減退させる」という仮説である。要は、組織が成長し続けるのは難しい、という話だ。

ペンローズは、その主因を「経営者サービス」だとしている。耳慣れない言葉だろうが、ざっくり言えば経営者や経営陣の能力のことである。

例えば、3名で始めたスタートアップがあるとして、売り上げが伸びてきたので社員を10名に増やしたとしよう。

そのままガンガン成長し続けられるかというとそうではなく、規模が大きくなり経営者らが多忙になることで、成長機会の発見や、経営資源の配分、新たなメンバーへの教育訓練などの「マネジメント」がうまくいかなくなり、成長が減退するという理屈である。直感的には理解できる。

会議中に頭を抱えて考える男性
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ペンローズ効果は大企業にも働くようで、近年では、トップ・マネジメント・チームがもつ経営者サービスがどう成長に影響しているか、といった観点から研究がなされていたりする。

過去に大勝した小泉政権がぶつかった“壁”

さて、高市政権の話である。大勝した自民党は、急成長企業と同じ状況にあるといえよう。そして、歴史的にみても、過去に似たようなことは起きている。「小泉チルドレン」だ。

小泉純一郎政権下、郵政民営化を争点とした2005年9月の衆議院選挙において、自民党の新人議員が83名もの大量当選を果たし、その新人議員らは小泉チルドレンと呼ばれた。83名の当選になぞらえて「83会」とも自称していた。ちなみに今回の自民党の新人当選者は66名で、約2割を占める。

この小泉チルドレンらがぶつかった壁が「教育」だったと言われる。経験が浅い議員が多く、杉村太蔵氏を代表としてトラブルも頻発した。ここで機能したのが武部勤幹事長であったという。「偉大なるイエスマン」を自称し、新人議員の教育長を務めた「番頭」がいたのである。

小泉チルドレンには有力な「生存者」も少なくはない。現在閣僚を務める木原稔官房長官、赤沢亮正経産大臣、片山さつき財務大臣らは元「83会」である。

ただ小泉チルドレン全体の勢いは長続きしたとは言い難かった。2009年の選挙では73名が立候補し、再選は10名にとどまった。2012年には30名以上が議員復帰を果たすものの、勢いは一過性だったことは否めない。