『安倍晋三回顧録』に記された驚きの事実
高市ブログにある「『政権公約』の記載内容を遵守することを前提に」とは何のことだろうか。
2012年衆院選の自民党政権公約を見てみると、次の一文がある。
TPPすなわち「環太平洋パートナーシップ協定」とは、言うまでもなく多国間の自由貿易協定であり、交渉参加国には高い水準の関税撤廃が求められていた。自民党の政権公約は要するに「“全ての関税を撤廃することになるのなら”TPPには反対」という意味だったと考えられる。
だが、これは「言葉のトリック」に過ぎなかったことがわかっている。
『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)にはこの経緯について次のような記述がある。
――第2次内閣の最初のテーマとして、TPPがありました。自民党は2012年の衆院選政権公約で「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対」と掲げていました。「聖域なき関税撤廃」が前提でなければ、交渉に参加すると読める巧妙な表現でした。
(著者注:安倍) よく考えられているでしょう。これは野党時代、高村さんが中心となって考えた文言なのです。(P107)
どういうことだろうか。元外交官、元民主党で現無所属の緒方林太郎衆院議員の著書『国益ゲーム』(ぱる出版)に次の記述がある。
再び『安倍晋三回顧録』を引用する。
――13年2月下旬に訪米し、バラク・オバマ米大統領と会談します。安倍さんがTPPについてどういう態度を表明するかが焦点でした。
安倍 訪米を控えて、政権内で侃々諤々の議論があったのです。自民党内の半分はTPPに反対だし、農業協同組合(農協)も反対。だから、交渉参加の表明は7月の参院選後でいいのではないか、という人が多かった。でも、私は、曖昧な説明では政権が持たないし、むしろ、日本が早く交渉を表明した方が、交渉国の中で有利な立場に立てるのではないかと思いました。交渉参加を堂々と打ち出していけば、経済成長には必ずプラスになると消費者に思われる。参院選で農協に「TPPに賛成なら落選させてやる」と脅されるより、「補償が必要ならば予算で対応します」と訴えた方が得策ではないかと考えたのです。麻生さんはこの案に、おーっとのけぞっていました。菅さんも、早期の交渉参加表明に反対でしたが、最後は分かってくれました。(P107~108)

