不登校と家庭内暴力
兄は中1の9月から不登校になった。
「本人は頑なに言いませんでしたが、たぶんいじめられていたのだと思います。兄はテニス部に入ったのですが、ラケットなどの物がよく失くなったり、壊れたりしていて、母が怒っていました」
兄の暴力は、だんだん物に向かっていった。壁やドアに穴を開け、窓ガラスを割るなど、家の中の物を壊した。皐月さんのランドセルや教科書、大切にしていたコミックなどもボロボロにされた。暴れる兄を止めようとして、母親が怪我をすることもあった。
そして兄が中3の時のこと。皐月さんが自分の財布を探していると、兄がニヤニヤしながら見てくる。怪しいと思った皐月さんは、
「私の財布知らない?」
とたずねると、
「知ら〜ん」
とニヤニヤしながら答える。
「兄ちゃんが盗ったんじゃない?」
と聞くと、
「盗ってないよ〜」
とふざけながら言う。
兄が盗ったと思った皐月さんは、
「お兄ちゃんが盗ったんやろ!」
と語気を強めた。すると、
「兄ちゃんは盗ってない! ここにあるやろがーっ!」
兄は皐月さんの死角になっていた場所にある財布を指差した。開けると、ちゃんとお金はそのままあった。
「兄の怒りを買った原因は私です。でも兄は、ありかを知っていたのに素直に教えず、わざと盗ったと勘違いさせるような態度を取り続けたのです」
自分で仕向けたにもかかわらず、烈火の如く怒り出した兄は、皐月さんに殴る蹴るの暴行を加えた。謝っても謝っても許してもらえず、窓を開けて外に向かい「お兄ちゃんは泥棒ではありません。私が悪かったです」と何度も叫ばされた。
恐怖に怯えた皐月さんは、鼻血や涙を急いで洗い流し、タオルを手に家を飛び出すと、母親の勤め先に向かった。
入り口で母親を呼んでもらうと、
「どうしたんね!」
と驚いて声を上げた。皐月さんの顔面は紫色に腫れ上がっていた。
一緒に帰宅すると、家にいた兄に、
「なんであんな事するの!」
と叱ったが、同時に皐月さんにも、
「あんたも兄ちゃんに逆らうんじゃないよ!」
と嗜めた。そして、
「その顔じゃ当分外には出られんね」
と言って、その後1週間くらい学校を休ませた。
「母は学校には、風邪とか腹痛とか適当なことを言っていたと思います。もちろん、母は仕事を休まず、1週間、私は1人で家にいました。なので、私が兄からDVを受けていることは、教師は知りませんでした」

