犬、猫以外は基準なし
日本動物福祉協会調査員で獣医師の町屋奈さんは、国が行うべき改善策として「理想的には、飼育を許可する特定の動物種を指定し、それ以外は原則として飼育禁止にするホワイトリスト方式の導入が望ましい。ただし、現実的な方法としては、ブラックリストを作成して、第一段として愛玩目的での霊長類の飼育禁止、次に飼養許可を有しない業者による飼育の禁止、という段階的な規制強化」を提案する。
では今の法規制はどうなっているのか。動物愛護管理法には犬と猫に関する具体的な飼養管理基準しかなく、それ以外については「自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたくなど日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間」などと具体性に欠け、行政指導がしにくい点が問題視されている。
そのため、環境省は2022年から犬猫以外のほ乳類について飼育基準の検討を始め、昨年11月に石原宏高環境相が審議会に基準案を諮問。パブリックコメントの募集を経て、今夏に省令が改正される予定だ。
不十分すぎる基準案
基準案によると、温度・湿度計の設置、健康管理、展示・休息時間、動物との接触方法などについてはある程度詳述されている。
だが、1匹当たりのケージの規模(縦、横、高さ)はウサギ、モルモット、ハムスターの3種類しか例示されていない。
その他11の動物(シマリス、チンチラ、デグー、フクロモモンガ、ヨツユビハリネズミ、フェレット、馬、豚、羊、ヤギ、牛)については、「行政職員向けの解説書で、各動物が必要とする広さと空間を可能な限り具体的に示す」としている。
なぜ、定量的な決まりを作らなかったのか。環境省動物愛護室の担当者は「国内の関連知見を調べても、健康に支障を来さない広さを確定するのが難しかった。海外の基準では、小動物でもかなり広い飼育スペースを求めている国もあり、それを日本に当てはめるのは難しい」と説明する。
「要するに日本の飼い方が狭過ぎるということ?」と聞くと、「『狭くても問題なく飼えている』という意見が有識者からもあった。野生動物にとって広い方がいいという意見は否定しないが、業に対する規制なので最低限のラインを考えた」という。
しかもこの11種類でさえ、展示個体のほんの一握りだ。前述のように触れ合い施設には、ほ乳類だけでも、前出のようなカワウソ、ナマケモノなど集客の目玉が数多くいるが、これらは解説書には出てこない。
規制対象がごく一部に絞られた結末について、有識者による飼育基準検討会の委員の一人は「ハムスター、モルモット、ウサギが最も飼育されている、という理由で3種になった。要するに『最大多数の最大幸福』という功利主義的発想だと思う」と答えた。

