本人が歩けるなら、歩かせるべき
病気になったあと、歩けるようになったとしても、「危ないから」と歩かせない家族もいます。
同じように病院や施設でも、たとえ本人が歩けたとしても歩かせないことが多々あります。
もし入院患者が歩いて転んで骨折したら? ナースの責任になってしまいます。
「危ないからおむつにしてくださいね」などとやさしく言うけれど、実は自分が始末書を書く事態を避けたいのです。おむつにしてトイレに歩いていかなければ、たしかに転ぶ心配はありません。
施設もまったく同じ事情です。患者にはおむつを使わせ、歩かせないほうが安全というわけです。でも僕に言わせれば「おむつにしなさい」と強いる言い方は、「まだ生きるのをあきらめないの? そろそろあきらめなさいよ」と言っているのと同じことです。
2階で寝ている老親に、子どもたちが「階段が危ないから1階に寝なさい」と言うのも同じ。「そろそろ死んでもいいんじゃない」と言うのと一緒です。その人は自分の足で上り下りして、2階に寝ているからこそ、生きていられるのです。
上り下りをやめさせてしまったら、弱ってしまう。歩けなくなったら、がんばれなくなってしまう。
自宅に戻ると歩けるようになる
入院中は歩けなかった患者がわが家に戻って、また歩けるようになった例を僕はたくさん見ています。
「歩こう」と言うと「私、歩けない」と言う患者さんも、もちろんたくさんいます。そう思い込んでいるのです。
「今、歩けなくたって、歩きたいなら歩けるようになるんだよ」と話して、「じゃあがんばる」と答える人は必ず歩けるようになります。歩くことは、「がんばれる」ことなのです。
努力しても延ばせない命は、残念ながらあります。人には必ず寿命がありますから、いくら死なないような治療をしても、遠からず死はやってきます。あとはなるようにしかなりません。
でも自分の足で立つこと・歩くことは、患者さん自身が努力をするに十分すぎる価値があるのです。

