「老人ホームに入居していた場合」の緩和要件
親が亡くなる前の準備で、節税できる額が変わるケースがあることも頭に入れておきたいです。
空き家特例の原則的な要件では、「相続開始の直前まで被相続人(老父・老母など)が一人でその家屋に住んでいたこと」が必要とされています(前編参照)。しかし実際には、亡くなる前に老人ホームや介護施設に入居しているケースが多いと考えられます。そのため、「うちの親は老人ホームだから、空き家特例は使えない」と諦めている方もいるかもしれません。
しかし、必ずしもそうとは限らず、被相続人が要介護認定などを受けて老人ホーム(施設)に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば空き家特例の適用が認められるようになっています。
この要件の中で、最も落とし穴になりやすいのが「要介護認定を受けたタイミング」です。空き家特例は、原則として「老人ホーム入所時点」までに要介護認定を受けていることが必要となります。つまり、入所後に要介護認定を受けた場合は、空き家特例の適用が認められないリスクがあるのです。
また、入所先は特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、介護老人保健施設、グループホームなど、法律で定められた施設である必要があります。介護のために親族の家に同居していた場合などは対象外です。
そして、被相続人が老人ホームに入所した後、その家屋を事業や賃貸に使ったり、他の人が住んだりすると、特例を使えなくなってしまいます。あくまでも「空き家のまま管理していた」状態を維持する必要があるのです。
よくある失敗として、親が老人ホームに入った後に「もったいないから」と子や孫を住まわせたり、知人に貸してしまったりするケースがありますが、これをやると特例が使えなくなります。
だからこそ、老人ホームへの入所が決まった段階(入所前)で、将来の特例適用を見据えた準備をしておくことが極めて重要です。具体的には、入所前に要介護認定を受けておく。急な入所が決まった場合でも、入所と並行して速やかに申請手続きを進めておきましょう。
相続から「3年目の12月31日」がデッドライン
以上、紹介してきた「空き家特例」ですが、絶対に守らなければならない期限があります。それは、「相続の開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日」までに売却(引き渡し)を完了させることです。
これを、「3年の猶予があるのか」と考えてはいけません。なぜなら、制度全体の適用期限が令和9(2027)年12月31日だからです。これは延長される可能性もありますが、今から備えるのであれば、来年2027年末までに売却(引き渡し)を済ませるように動くのが確実です。
空き家特例は、年間数百万円規模の節税効果を持つ強力な制度です。しかし、要件が複雑で、一つでも取りこぼすと適用できなくなります。
実家の問題を「面倒だから」と先送りにするほど、選択肢は狭まり、税負担は重くなります。相続の準備の際は、残った実家をどうするかを早めに決めて、最適な選択を取れるようにしておきましょう。


