「納得できるものを自分の手で」

売り上げが急上昇したものの、岡田さんは「正直、大金持ちになることが夢ではない」と語り、現時点ではこのままの体制で続ける方針を考えている。

「自分が作ったものがお客さんの手元に届いて、その人たちとコミュニケーションが取れる。それが今の生きがいになりつつある。もちろんメーカーさんの下請け仕事も本当にありがたいが、マンホール部品を作っても、こんな経験を味わうことはなかった」

また、「拡大したくない」という考えの背景には、自分自身が納得できるものを、責任を持ってお客さんに届けたいという思いがある。

「一度、仕上げ作業を人に任せたことがあったのですが、どうも微妙で。だから今は、仕上げは僕がやっています。普通、社長ってそこまでやらないですよね。でも60点のものを出して文句を言われるなら、自分が納得できる商品を出した方がいい」

誰から問い合わせが来ても、「私がつくった」と自信を持って送り出せるものだけを届けたい。その職人としての妥協のなさもIMONOPANが1億円以上売り上げた理由なのかもしれない。

今も腱鞘炎を患いながら仕上げ作業を続けている岡田さん。ファンからは「ちゃんと眠ってください」と体を気遣う声も届いているが、それでも目の前のお客さんの笑顔と喜びのために、今日もフライパンを作り続けている。

腱鞘炎を患いながら仕上げ作業を続けている
写真提供=岡田鋳物
腱鞘炎を患いながら仕上げ作業を続けている
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