在庫の山でも「自分の商品」がうれしかった
「最初は家族のバーベキューで使う鉄板が欲しかったんです。完成したもので肉を焼くと、音が良くおいしそうに感じたので、『もしかしてこういうのを商品にしたらいいのかな』と。ちょうどそのタイミングでアウトドアとかキャンプも流行っていたので『需要があるかも』と思い、クラウドファンディングをしました」
達成率は400%超を記録。その後は起死回生を狙い、ジンギスカン鍋やココットなどアウトドアで使える鋳物を展開。しかし、年間売り上げは約30万円にとどまり、在庫の山を抱えることとなる。
それでも岡田さんは手を止めなかった。
「自分の商品があるっていうのが、めちゃくちゃうれしくて。下請けとして言われたものを作るのも立派な仕事だと思いますが、メーカーさんの仕事って、商品の写真すら撮っちゃいけない。まるで影武者みたいな感覚です」
初めて自社商品を持ったことで、岡田さんは「作り手としての思いを形にして発信できる」ことを実感。それが、ものづくりのやりがいを支える軸になっていった。
「あとはお客さんに見つけてもらうだけ」
翌2023年は口コミの影響で、ジンギスカン鍋やココットなどの売り上げは219万円(約7倍)に伸びた。しかし岡田さんの心中は複雑だった。
「いろいろと作っていたのですが、頭打ちな感じもあり『これ以上伸びない』と思ったんです。それで調理器具ではなく、ペン立てや照明スタンドとかも作ったんですが、それも全然売れずで……」
いいものでも売れない。そんな時、妻のある行動がヒントを与えてくれた。
「今のIMONOPANのベースになっている商品を、妻が家でよく使うんです。今までいくつも商品を作ったのに、家で使っているところなんてそれまで見たことなかった。
そこで、『そもそもアウトドア用じゃなかったんじゃないか』と気がついて。以降、妻みたいに家庭で料理をする人たちに、どう届けたらいいんだろうって考えました」
届ける相手が違う。本当に届けるべきは日常的に台所に立ち、フライパンを握る主婦層たちではないか。そこで、「アウトドア向け」というこれまでのコンセプトそのものを変えて、2024年に「IMONOPAN」と名付けて売り出すことにした。
「ものがいいのは分かっている。あとはお客さんに見つけてもらうだけ」
しかし広告費をかける余裕はない。商品を知ってもらう方法を探すなかで、岡田さんが選んだのがInstagramだった。無料で継続的に発信できるうえ、調理シーンの写真や動画で使い勝手を具体的に示せる。さらに記録用に撮影していた素材を活用できた点も、選択の決め手となった。
そうして岡田さんは、商品を“見つけてもらう”ために、本格的にInstagramでの発信を始めた。これまで一切SNSをやったことがなかったため、ノウハウはゼロ。初めのころはフォロワー500人以下、再生回数も200回ほどの状態が続いた。しかし岡田さんは決してあきらめなかった。



