ここまでする職人は少ない、だから勝てる
「毎日手を真っ黒にしてフライパンを削り、夜はスマホで調理動画を撮って編集までこなす職人はそういない。それができたら勝てるんじゃないかと思いました」
インフルエンサーに依頼する方法もあるが、それだとコストもかかるし、作り手の熱量は乗せにくい。
この商品は売れる。そう確信していた岡田さんは、IMONOPANの写真や動画を1人でも多くの人に発見してもらえるよう、毎日投稿した。
現在の岡田さんの投稿を見ると清潔感のある画づくりに加え、製品の特長を端的に伝えるテロップなど、視聴者に商品の良さが伝わる工夫が随所に見られる。この完成度を高めるうえで、一番重要だったのは妻の意見だった。
「妻はものづくりに携わっていないので、商品にあまり思い入れもない。だからこそ、正直な意見が返ってくるんですよね。『動画の尺がちょっと長い』とか、最初はよく言われました(笑)」
また投稿内容についても、「フッ素コーティングは便利だけど、剥がれや安全性が気になる」「鉄フライパンは手入れの手間や扱えるかどうかが不安で、価格も高く手が出しづらい」といった妻の声を踏まえ、内容に反映させた。
フライパンを売るべきペルソナが身近にいる。その的確な意見もあってか、投稿は徐々に反響を得るようになる。
投稿へのコメントは「口コミ」に
「最初は全く売れなかった。でも3月ごろには1カ月の売り上げが30万円を超えて、7月には200万円。9月には1935万円。1年を通すと4746万円を売り上げました」
Instagramの投稿が411万回再生(2024年8月30日投稿)を記録し、続く動画も672万回再生(2024年9月4日投稿)に達した。その後10日間で2000件以上の予約が入り、IMONOPANは2024年9月以降、数カ月待ちの状態となった。
Instagramでは、購入者の感想や使用感がコメント欄に集まる。初めて知った人にとっては、使い手の声が見えること自体が安心材料になり、検討を後押ししたと考えられる。なお、672万回再生の投稿には、600件を超えるコメントが書き込まれている。
気が付けば2025年8月、直近12カ月売り上げは1億円を突破。Instagramのフォロワーは8.8万人まで増え、IMONOPANは在庫の山から一転、入手まで1年以上待ちとなった。
「実物を見られない中で、1億円以上を売ってしまった」。そんな戸惑いもあったが、現在は、GinzaNovo(旧・東急プラザ銀座)に出店。チャンスをくれた実業家の桑田龍征氏には「感謝をしている」と語った。
思えば岡田さんは、インタビュー中に何度も、自分を支えてくれた周囲の人々に対して感謝の意を述べていた。その背景には、IMONOPANが決して1人で築いたものではなく、さまざまな縁の中で形づくられてきたという実感があるように思える。

