「初任給バブル」の裏にある危機感

近年、わが国の初任給は年を経るごとに上昇してきた。厚生労働省の調査などによると、2000年ごろからコロナ禍が発生する前まで、わが国の大学卒業者の初任給は概ね月20万円前後で推移した。現在の初任給の推計では、23万円程度に達したとみられる。業種や就業地域による影響もあるが、初任給の上昇は顕著だ。

その主な要因として、企業の新卒需要の高まりがある。若手社員を多く確保して、中長期的な事業体制を整備する企業は増えている。ある程度の専門知識を持つ若手社員に活躍の場を与えて、業績の拡大につなげる意図もある。

初任給の対応が遅れると、競合他社などに人材が移る恐れは高まった。人手不足倒産に陥る企業もある。そうした展開を防ぐため、企業は初任給を引き上げて、労働市場でアピールすることが必要になった。

企業を取り巻く事業環境も変化した。成長期待の高い分野での収益力向上に、実績あるプロ人材の確保は必要だ。プログラミングなどの知見を持つ新卒学生を確保するため、初任給を引き上げる必要性も高まった。買収、マーケティングなどの専門人材の確保に、高い給与水準を提示して中途採用を増やす企業も多い。

新卒で「年収1000万円」が現実になっている

ノジマは、そうした事例の一つだ。2026年度の初任給を2万7000円引き上げ、34万4000円にする。2021年度の初任給(24万5000円)に比べ40%近い引き上げだ。そのほかにも、初任給の引き上げを表明する企業は多い。

【図表】ノジマの初任給(2021~2026年度)
※ノジマ「26年度新卒社員の初任給を最高40万円へ引き上げ」(2026年2月12日)より

昨年末、アパレル大手のファーストリテイリングは、2026年3月以降入社の新卒社員の初任給を37万円に引き上げた。引き上げ幅は4万円だった。大手の生命保険などの金融機関でも、初任給を35万円に引き上げるケースが目立つ。

一方、大手の総合電機メーカーの中には、新卒一括採用をやめる企業もある。通年で、新卒と中途を同じように採用し、専門性を持つ新卒では年収1000万円に達する場合もある。国内金融機関では、高度な金融知識を持つ大学院修了者などに、50万円の初任給を提示するケースもあるという。