労働市場の変化で「喜ぶ人」と「苦しむ人」
賃金上昇、満足感の高い就業環境の実現などの動機で、わが国労働市場の流動性はさらに高まるだろう。業績がよくても、実力ある人を増やすために希望退職や早期退職を募る企業もある。中長期的に、わが国の労働市場が欧米のような状況に向かう可能性は高い。
経済が成長するには、有限な資源を有効に活用することが大切だ。ある意味、わが国の雇用慣行は、有限な労働力を特定の分野に塩漬けにしてきたといえる。個々人の実力の発揮、新しい発想の実現に向けて人材が流動化することは経済の成長に必要だ。
ただ、すべての人が、労働市場の競争原理に対応できるわけではない。多くの人が、自律的によりよい状況を目指す環境の整備は政策の役割である。
転職した際に、確定拠出年金の移管を確実に実行しやすい制度設計は重要だ。転職者の増加に伴い、企業型確定拠出年金(DC)の移し忘れは増加した。一定期間に手続きをしないと、資産は国民年金基金連合会に自動で移管される。その場合、資産運用はストップする。制度の改良は急務だ。
日本の潜在成長率を高めるチャンス
また、学びなおしの制度を拡充し、人々の就業意欲を高める政策の必要性も高い。企業のグローバル戦略が加速すると、必要になる専門能力は増え高度化する。対象になる専門性は、マーケティング、財務、プロジェクトの運営や管理、買収戦略の実行、多様な人材の管理など拡大している。
政府は、先端の技術などに習熟し、それを発揮できる環境の整備を考える必要がある。そうした取り組みが増えると、成長期待の高い分野、企業での就業を志す個人が増えるきっかけになる。
新しい取り組みに自発的に取り組む人が増えれば、わが国の課題といわれる起業は増えるだろう。それは、潜在成長率(経済の実力)の向上に必要な要素だ。総選挙を経て自民党が安定した政権基盤を手に入れた中、高市政権は中長期の視点でそうした取り組みを実施することが望まれる。

