取り残された40~50代の「就職氷河期」

初任給の引き上げの一方で、中堅やシニア層の従業員の賃金がなかなか上がらない。専門家の一部からは、1993年~2004年ごろの“就職氷河期”に入社した世代では、業績拡大にもかかわらずなかなか賃金が上昇しないと不満が高まっているとの指摘もある。

これまで、新卒を一括で採用する企業は多かった。入社直後の賃金水準は低く、就業年数を重ねると基本的に横並びで昇進、昇給した。いわゆる年功序列型賃金だ。

その中から、管理職、役員に登用される人が出る。基本的に就職した企業で定年まで働く。わが国の企業は、こうした新卒一括採用、年功序列、終身雇用を重視した。今なお、そうした制度を守っている企業はある。

ただ、そうした雇用慣行は変化している。変化せざるを得ないのだ。従来のやり方では、世界市場の競争に対応し、長期的に従業員の意欲を維持し、企業を成長させることは難しい。多くの経営者は、それに気づいたのである。

若いAI人材と戦わなければいけない

AI関連分野の急速な成長は、そうした危機感を高めるきっかけになった。社内にAI=人工知能の利用に習熟した人がいるとは限らない。必要に応じて、労働市場からプロ人材を登用する必要性は高まる。

中には、学生時代からプログラミングなどの知識をつけ、新卒者でもプロ並みの技能を持つ人もいる。成長期待の高い分野で、専門性の高い人材は引く手あまただ。需要が増えるに伴い、労働力の供給価格は上昇する。つまり、賃金は上昇する。こうした市場原理(競争原理)が、わが国の企業、労働市場で働き始めた。

スマホ画面に表示された各種生成AIアプリのアイコン
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その結果、従来の雇用の考え方・制度では成長は難しいことが明確になりつつある。ここ数年、毎年のように初任給の引き上げが発表されているのはそのためだ。

若手社員に比べて賃金が上がりづらい、シニア層の中には自ら外資系企業に転職する人もいる。彼らの経験(暗黙知)を必要とする企業も多い。わが国の雇用慣行の変化は加速するだろう。