見通しの立たないスペインからの輸入再開

こうした動向を踏まえると、スペインからの全面的な輸入停止措置は、イタリアのように長期化しない可能性もある。すでに説明したように、スペインとイタリアではウイルスの侵入ルートが違うことに加え、現在のところスペインは感染拡大の封じ込めに成功している。

このまま封じ込めがうまくいけば、日本としても地域主義にもとづく輸入再開を検討せざるを得ないだろう。

とはいえ、スペインからの輸入がすぐに再開する見通しは高くない。

たとえ、このままスペインが封じ込めに成功したとしても、安全性に関する科学的な評価には数カ月かかる可能性もある。

実際、昨年1月にドイツで牛の感染症である口蹄疫が発生し牛肉などの輸入が停止された際は、1月以降に新たな感染例は確認されなかったものの、日本政府が輸入停止措置を解除したのは10カ月後のことだった。

ウイルスと細菌の培養されたペトリ皿を保持している科学者
写真=iStock.com/solarseven
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スペイン産豚肉の輸入停止の長期化への備えとして、カナダや米国などからの輸入に切り替える動きが広がるだろう。ただし、安価に大量のバラ肉を調達できたスペインの穴を完全に埋められるかどうかは不透明だ。

日本政府はどう舵を取るのか

冷凍豚肉の輸入量ではスペインに次いでブラジルが2位だが、ブラジル国内ではバラ肉需要が高く、スペイン産ほどの低価格で大量の調達が可能かどうかは不透明だ。輸入品の価格高騰が続けば「国産への切り替え」、あるいは「豚バラを使うメニューの提供中止」という苦渋の決断を迫られる飲食店が増える可能性もある。

一方でスペインにとっても、大きなマーケットである日本による輸入再開は悲願だ。スペインの現地報道によると、現地の食肉業界関係者は重要市場である日本とフィリピンが地域主義を適用していないことに危機感を持っているとされ、スペイン農業省も地域主義の適用に向けて日本政府と交渉を続けていると報じられている。

フランスに対してASFに関する地域主義の適用を認めている以上、スペイン政府から十分な科学的根拠と輸入再開の要請があれば、日本としてもそれを無視することはできない。

国民食であるラーメンのチャーシューにも影響が出るなか、スペインでの感染対策の行方と、日本政府がいつ、どのタイミングで「防疫」と「食卓の経済」のバランスを取り、輸入再開へと舵を切るのか、その判断が注目される。

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