代わりの豚肉が見つからない
そのスペインでASFが発生し、この供給源が断たれたことで、輸入バラ肉の卸値はわずか1カ月でキロ1000円近くへと急騰。「もうチャーシューにバラ肉は使えない」と頭を抱えるラーメン店が相次いでいるのは、この安くて使い勝手の良いスペイン産の代わりが、世界中どこにも見当たらないためだ。
事の発端は、昨年11月28日にスペイン北東部・バルセロナ県で野生イノシシの死骸が見つかったことだった。検査の結果、ASFの陽性反応が確認され、スペインでは実に31年ぶりにASFが発生した。その後の調査によると、2月6日時点までに少なくとも142頭の野生イノシシでASFウイルスへの感染が確認されている。
ヨーロッパでは各国でASFの発生が確認されており、2022年1月にはイタリアで野生イノシシの死骸からウイルスが検出された。イタリアではその後、北部を中心に養豚場の豚への感染が広がり、現在も生ハムなどの輸入は再開されていない。
そのため、スペインでのこの事態を受けて「これから数年単位でスペインからの輸入も止まるのか」と関係者の危機感は高まった。
だが、ここで注目すべき点がある。発生確認から2カ月以上が経過した現在、スペイン当局は感染拡大の封じ込めに成功しているのだ。
意外なウイルスの出所
スペイン当局は感染確認地点から半径20キロ圏内を監視区域に設定し、これまでのところ区域外での感染は確認されていない。また、この区域には約50の養豚場があるが、臨床検査などの結果では2月6日時点で陽性反応は確認されていない。
また、イタリアとの違いではウイルス株の特徴も重要だ。
イタリアで確認されたウイルスはヨーロッパでの流行株と同じ系統であった一方、スペインで検出されたウイルスはそれとは別の、ワクチン開発などに広く使用されている株の系統であることが分かっている。
そのため、ウイルスの「出所」として当初疑われたのは「研究所からのウイルスの流出」だった。野生イノシシの死骸が見つかった地点の近くにはASFウイルスを扱う研究施設が存在するため、そこからの流出が疑われたのだ。しかし調査の結果、研究所からの流出はなく、現在のところ、ASFウイルスに汚染されたソーセージなどを介してウイルスが侵入したと考えられている。

