入会率が大幅に伸びた「たった一つのストーリー」

そんな佐々木さんの意志や信条を受け取り、言語化した理念は「諦めない。なんとかする。できる歓びと、充実した日々のために。」でした。

フィットネス業界は、大手のスポーツジムだけでなく、マイクロジムや、ピラティスやヨガに特化したスタジオ、個人で活動するパーソナルトレーナーが増える一方で、差別化が難しく、廃業していく方も多いと言われています。

そんな中、これだけ独自の考え方とスタンス、根拠となるストーリーを明確に言える会社は多くありません。フィットネスクラブに入会する人のすべてが、「痩せたい」「筋肉をつけたい」というニーズを持っているわけでもないのですから。

同社はその後、成約率が飛躍的に伸び、体験トレーニングに来た方に理念を語るプロセスを取り入れたことで、入会率が8〜9割も上昇したそうです。意志や信条を理念として言語化することができれば、企業の競争力としてしっかりと機能するのです。

理念を、会社と社員との「共通の地図」に

「会社は船である」

そう言うと、ピンとこないかもしれません。

ですが、何かしらの目的に向かって進んでいるという点においては、共通する点が多々あります。

また、どんなに豪華な船だとしても、目的地が決まっていない船には誰も乗りません。船を会社に置き換えると、「目的地」として示すべきものは、やはり理念やビジョンということになります。

しかしながら、その理念やビジョンといった進むべき大きな方向性を示せていない会社は、案外多いのです。

ジグソーパズルの上に赤い木製の人形
写真=iStock.com/Jerome Maurice
※写真はイメージです

ただ船とは違って、そんな会社でも入社する人はいます。生きるために、条件が大切な人は一定数いるからです。

目的地は決まってはいないが、乗組員に気のいいやつが多いとか、食事がおいしいとか、設備が充実しているといった条件の話は、会社で言えば働く仲間や待遇、立地の話でしょう。

もちろん大切な要素ですが、それが理由で乗り込んだ船であったとしても、目的地がないのであれば、乗っていてもいつかは降ります。長く続くものではないでしょう。

だからこそ、「この船はここへ向かうのだ」という明確な宣言が必要となるわけです。

一方で、目的地を明確に宣言していた場合、それが自身の目的と重なり合えば、多少の条件への不満には目をつぶってでも、船に乗り込んできてくれる可能性があります。

さらに言えば、自分が乗った船の状態をもっとよくしたいと、能動的に動いてくれることもあるでしょう。