制度改正でコロコロ変わる「年収の壁」。結局、いくら稼ぐのが正解なのか。手取りを減らさない鍵は、自分に当てはまる戦略を立てることにある。チャンネル登録者数110万人超の公認会計士が解説する。
サラリーマン世帯:昇給しても手取りが減る「665万円の崖」に要注意
パート主婦世帯:年収130万円未満になるよう契約書を書いてもらう
子育て世帯:大学生のアルバイトは年150万円までに収める
年金世帯:年収180万円以下なら子どもの扶養に入る
全世帯共通
「税金の壁」と「社会保険の壁」2つの壁の違いを理解する

税金と社会保険では負担する金額が全然違う

「178万円の壁」「130万円の壁」といった言葉に注目が集まっています。ただ、「自分に関係がある話なのか」「結局いくらまで働くのが正解なのか」と混乱している方も多いのではないでしょうか。

山田 真哉
山田 真哉(やまだ・しんや)公認会計士・税理士。芸能やアニメ関連専門の会計事務所「芸能文化税理士法人」会長。内閣官房行政改革推進会議EBPM・歳出改革等有識者グループ参画。著書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は165万部を超える大ベストセラーに。YouTubeチャンネル「オタク会計士ch【山田真哉】少しだけお金で得する」は登録者数110万人超。

公認会計士・税理士の山田真哉です。今回は、ここ数年で一気に注目度が高まった「年収の壁」について解説していきます。このテーマについては、すでに私のYouTubeチャンネル「オタク会計士ch【山田真哉】少しだけお金で得する」でも繰り返し解説してきました。改めてプレジデント誌上でも取り上げ、制度の全体像と考え方、結局どう働くのがトクなのかを、整理した形でお伝えしたいと思います。

最初にお伝えしておきたいのは、「年収の壁」とは特定の1本の線があるわけではない、という点です。年収の壁とは、「その金額を少しでも超えると、税金や社会保険の負担が増え、結果として手取りが減ったり、増えにくくなったりする境目」の総称です。問題になるのは、収入が増えた分以上に、負担が一気に増えてしまうゾーンが存在することです。

このゾーンに入ると、「頑張って働いたのに、思ったほど手元にお金が残らない」「場合によっては、手取りが減ってしまう」という現象が起こります。これが、いわゆる「働き損」と呼ばれる状態です。

そして、年収の壁がわかりにくい最大の理由は、壁が1種類ではないことにあります。現在の制度では、年収の壁は大きく分けて2種類存在します。

1つ目が、「税金の壁」。これは、所得税や住民税がかかるかどうか、あるいはどれくらいかかるかが変わるラインです。一定の年収までは税金がかからない、もしくは軽い負担で済みますが、あるラインを超えると、所得税や住民税が発生し、手取りの増え方が鈍くなります。

2つ目が、「社会保険の壁」です。こちらは税金とはまったく別の仕組みで、健康保険や年金の保険料を自分で負担するかどうかが変わるラインになります。社会保険の壁を超えると、毎月、まとまった金額の保険料を支払う必要が生じます。その結果、年収が増えても、手取りが大きく目減りするケースが出てきます。

ここで重要なのは、「税金の壁」と「社会保険の壁」は、同じ年収ラインで動いていないという点です。税金のルールは主に財務省が、社会保険のルールは厚生労働省が所管しています。そのため、それぞれが別々の考え方で制度設計されており、必ずしも連動していません。このズレこそが、「年収の壁」をややこしくしている正体です。

税金の面では得をしているつもりでも、社会保険の負担が急に重くなる。あるいはその逆も起こる。

こうしたズレを理解せずに働き方を決めてしまうと、「思っていたのと違う」「こんなはずじゃなかった」という事態に陥りやすくなります。