“レアで美しい旧車”を超えた存在
コスモスポーツは、マツダがトラックや三輪車メーカーから脱皮して総合自動車メーカーへと成長する過程で生まれた車であり、技術者たちの信念と柔軟性、そして粘り強さを象徴している。単に“レアで美しい旧車”というだけではなく、日本の工業文化の根幹を示す教科書のような存在として捉えるべきである。そうした意味では、他の旧車とは一線を画す存在となっていると言える。
レストアの現場では、この車に触れるたびに戦後の技術者たちが歩んだ苦難の道のりが蘇る。ロータリーエンジンという世界が諦めた技術を形にした努力は、現代の技術者、そして旧車を愛する者全てにとって大きな示唆を与える。
ただ粘り強かっただけではなく、正面突破できない課題には発想を変え、材料を変え、振動特性を見直し、時には常識を破る手法を試す。コスモスポーツの開発史は、「諦めず、しかし固執せず」という日本的な強さそのものと言えるのだ。
コスモスポーツは単なる旧車ではない。機械としての美しさと歴史的背景の奥深さ、そしてロータリーエンジンという唯一無二の技術を兼ね備えた「名車」なのである。
「楽で安全な現代車」との違いが魅力的
現存台数は少なく、レストアの難度も高い。しかし、それでもなお多くの愛好家が憧れ、出会いを待ち続ける理由は、コスモスポーツが単なる乗り物ではなく、「日本の誇り」を背負った歴史遺産そのものだからだ。国産名車の中でも、コスモスポーツほど「日本そのもの」と評されるモデルは多くない。
現代車が極度に安楽かつ安全になり、“工業製品としての自動車”に触れている感覚が薄れていく中で、旧車は人間が機械を扱う際の原点を呼び起こす存在となっている。加速・減速・操舵・機械音・振動のすべてに明確な因果があり、乗り手の技量や理解がそのまま走行に表れる。スマートフォンを操作するように“なんとなく扱う”ことは許されず、常に意識的でなければならない。だがその緊張感こそが、旧車にしかない魅力の核となっている。
そして今もなお、コスモスポーツの前に立つ人々は、この車が生まれるまでに積み重ねられた努力と、その背後にある日本人の粘り強さを必ず語る。レストアという作業が単なる修理ではなく、歴史の継承であることを強く実感させられる一台でもあるのだ。



