車体の随所から職人の手仕事を感じられる

車体デザインは、日本車でありながらヨーロッパの本格的な小型スポーツカーのようであり、流線形でシャープなフロントノーズとドアからテールに向かって直線的に引き締められたプロポーションを持つ。リアタイヤ上部がカバーリングされ、空力を意識しつつゴージャスなデザインにまとめ上げられた。

インテリアのデザインも秀逸で、特に運転席周りはドライバーオリエンテッドで飛行機のコックピットを思わせ、多くのカーファンを夢中にさせた。

コスモスポーツの車内写真
写真提供=マツダ

現在、国内市場に流通する個体は年に数台と極めて少なく、レストア現場にとっても希少車中の希少車である。

ロータリーエンジンは構造が単純に見える半面、レシプロとは異なる専門的知識を必要とする部分が多い。特にハウジングの摩耗具合の判断、アペックスシールの交換、圧縮圧力の測定並びに調整はロータリー専門工場でなければ対応が難しい。旧車レストア店の多くが外注連携するのはこのためである。

外装レストアも同様に非常に困難だ。メッキのバンパーやモール、独特の曲線を描くフェンダーラインなど、当時の技術と金型を再現するには高度な工芸的加工技術が求められる。

とはいえ、コスモスポーツはレストアを進める過程で、単なる機械の集合体ではなく、車体の各所から技術者が直接手仕事をして加えた産物であることが明確に感じ取れる。現代車が精密な工業製品へと変革したのに対して、コスモスポーツには職人気質の手作業と手間の積み重ねによる“温度”が存在するのだ。

「ながら運転」なんてもってのほか

コスモスポーツが誕生した時代には、現代のような厳しい安全規制が少なく、エアバッグが装備されていない車両が多い。中にはヘッドレストやシートベルトすらせずに走行をする事が合法な車両もある。旧車は新車当時の法規が適応されるため、現代の安全基準を満たしていない状態でも公道を走行することができる。

しかし、その危険さは、むしろ旧車オーナーの安全運転意識を高めている。余裕がない車両だからこそ、スマートフォンはもちろん、ナビの操作などの「ながら運転」は皆無であり、現代車よりも事故率が低いといわれる理由もここにある。旧車は運転者に「機械への敬意」と「集中力」を半ば強制する存在であり、それもまた運転の楽しみとして、魅力のひとつとなっている。

道路を走るコスモスポーツ
写真提供=マツダ