クレイジーと笑われてもやり続ける
2023年6月、国内外からお客さんが絶えない繁盛店になった鮨し人を閉めて、別の場所で立ち食い鮨店「立ち喰い鮨 人人」を開いた。やっと借金を返し終えたタイミングで、また新しく借金をすることになった。
そこまでして、なぜ?
「知り合いのシェフたちに『お前はクレイジーか』と笑われましたし、妻からも『なんでそんな生き方するの?』と言われました。でも、このままだと成長できなくなると思ったんですよ。立ち食いってめちゃくちゃ回転させて、量をこなすじゃないですか。量は質を生むと思ってるんですよ。僕は一回の素振りでホームランを打てる天才じゃないから、100回でも1000回でも素振りをしなきゃいけない。僕のとりえは、感覚をつかむまで同じことをやり続けられることなんで」
修業経験のない木村さんにとって、立ち喰い鮨は自分に課した修業の場。だから、自分が納得さえすれば、お店が賑わうようになっても、手放すのは惜しくなかった。
満を持しての挑戦…お客さん来ず
2025年6月、「立ち喰い鮨 人人」閉店。その1カ月後、過去2回とは桁が異なるお金を借りて、別の場所に「鮨人」を開いた。
現在、58歳。食べログで何度も富山トップに立ち、ゴ・エ・ミヨにもミシュランにも掲載された。「あら輝」の荒木水都弘氏と交流を持ち、「おいしくなった」と褒められた。海外でも高く評価されるようになり、世界的なシェフと顔見知りになった。満を持しての船出の場が、石川県金沢市。世界を見据えて、近年、外国人観光客が急増している町を選んだ。
1階では木村さんの弟子たちが予約不要で立ち食い鮨を提供し、2階の「離れ」は完全予約制で、有名店で働いていたベテランの職人が本格的な鮨を握る。こちらは1万7600円のコースで、木村さんを指名すると3万8500円になるという、ひとつの店で3段階の鮨を提供するユニークかつ野心的な業態だ。
「絶対にお客さんが来ると思いました」
このお店が話題になり、一気に人気店に……とはならなかった。


