中国軍が想定している台湾への「斬首作戦」は成功するのか。軍事ジャーナリストの宮田敦司氏は「習近平にとって最も避けたいのは戦争の長期化だ。そのため、短期間で決着がつくように思える斬首作戦は魅力的に映る。しかしこの作戦は、実行した瞬間に泥沼のシナリオを招く致命的矛盾を抱えている」という――。
2026年1月16日、人民大会堂の北京ホールで大使らを前に演説する習近平氏。中国の習近平国家主席は16日、北京の人民大会堂で新たに就任した駐中国大使18人から信任状を受け取った。(北京=新華社記者/黄敬文)
台北市街を再現して「斬首作戦」訓練
1月3日に実行された米軍によるベネズエラ攻撃で、ニコラス・マドゥロ大統領が拘束された。これをきっかけに、中国軍による台湾への「斬首作戦」の可能性がメディアで取り上げられるようになっている。
斬首作戦とは、要人の暗殺や拘束によって敵国の指揮系統の無力化を図る手法を指す。中国は以前から台湾を念頭に置き、この作戦の準備を行っている。
中国軍最大の訓練場である朱日和合同戦術訓練基地(内モンゴル自治区内)には、2015年に台湾総統府を模した建物が造られた。その後も外交部(外務省に相当)や司法院、国防部後備指揮部を模した建物が続々と建てられ、台北市街地を砂漠の中に再現。模擬総統府と模擬司法院をつなぐ全長280メートルの地下道まで存在している。ここで台湾指導部を排除する作戦の訓練が行われているのだろう。
台湾指導部を排除し、短期決戦で終わらす
なお、直近では1月16日、国営中央テレビの軍事チャンネルで放送された動画をもとに、中国共産党系メディアが斬首作戦の訓練の様子を伝えている。具体的な場所や時期、部隊名などは伏せられていた。
中国の斬首作戦は台湾の指導部を初動で排除し、国家としての意思決定を不可能にすることで、短期間で戦争を終わらせることを目標としたものだ。これが達成されたとき、作戦は「成功した」といえる。
しかし結論から言えば、台湾に対する斬首作戦は成功の可能性が極めて低い。むしろ実行した瞬間に中国自身が戦略的失敗へ踏み出す構造を内包している。

