離婚の話し合いがこじれる原因にはどんなものがあるのか。離婚や男女問題に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「最近の20代、30代の離婚では、両者の話し合いに親が介入してくることは珍しくない。そのために、本来であればそこまで揉めずにすむ離婚がこじれ、当人たちが納得のいく着地ができなくなることもある」という――。
※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。
机を挟んで座り、口論している男女
写真=iStock.com/years
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離婚の相談に母親が同席

私の事務所に、30代の会社員Aさんが相談に来ました。問い合わせの内容は、「妻と仲が悪くて別居している。離婚の条件を決めたい」というごく一般的なものでした。

当日事務所に現れたAさんの横には、女性が立っていました。どなたですかと聞くと、「母です」と言います。

私は、「お話はあくまでご本人から伺いますよ」と念を押した上で、相談を始めました。

経緯を聞いていくと、母親が会話に割り込んでくることはないものの、Aさんは言葉を選びながら、どこか歯切れの悪い話し方をします。こちらが質問をすると、母親の方を見る場面も何度かありました。

Aさんは結婚10年目で、同じく会社員の妻との間には7歳になる長男がいます。Aさんの要望は、財産分与は相応に行い養育費も基準通りに支払う、長男の親権は希望しないが面会はしたいという、基本的な内容でした。

一般的な協議を行えばおおむねその内容で合意になるだろうという見通しを示して、Aさんからも了承を得て、依頼を受けることになりました。

穏やかだった協議が突然ストップ

その後妻にも弁護士が付き、離婚協議が始まりました。協議は比較的穏やかに進み、主な財産は預金のみなのでそれを分ける、養育費は双方の収入に応じた基準通りに月7万円という条件で、Aさんと妻の了承を得ることができました。

そこで和解条項案を作成して、最終確認のためにAさんに見せたところ、突然ストップがかかりました。

Aさんはメールで「この条件でなら合意する」と、和解条項案のデータを修正したものを送ってきたのですが、その内容は、長男の親権は夫、財産分与なし、慰謝料を支払え、さらに結婚生活が破綻したことについて妻とその両親からの対面での謝罪を求めるというものでした。

Aさんは、これまでの協議で決めてきた条件をすべて変えてしまい、さらに話題に出たこともない謝罪について持ち出してきたのです。