『ハリー・ポッター』のようなフォーマルディナー

ケンブリッジ大学の学生生活で最も印象的な体験のひとつが、週に数回行われるフォーマルディナーです。

荘厳なホールにキャンドルが灯され、参加者はガウンをまとい、格式ある食事を共にします。まるで映画『ハリー・ポッター』の一場面のようなこのディナーは、ただのイベントではありません。

実は、コミュニケーションを鍛える絶好のトレーニングの場でもあるのです。

このフォーマルディナーにはたくさんの厳格なルールがあります。

まず、ドレスコードがあります。スーツやドレスの上に、真っ黒なガウンを着ます。Tシャツやスニーカーを着ていくと、入り口で追い返されて、食事にありつけません。

そのほかにも、会の開始を知らせる銅鑼どらと、ラテン語での祈りなど、一見すると堅苦しく感じられる伝統があります。

しかし、これらの形式や伝統はすべて、人と人との対話を促進し、関係を築くためのしかけとして機能しています。ケンブリッジでは、食事の時間をも、「会話の訓練」に変えてしまう工夫があります。

キャンドルライトと上質なテーブルセッティング
写真=iStock.com/Sergey Dolgikh
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一度の食事で複数人と会話するしくみ

たとえば、食事は前菜・主菜・デザートの3プレートで構成されており、各プレートごとに隣の人と話す相手を変えなければならないという慣習があります。

これは、たった一度の食事でも複数の人と会話する機会を設けるためのしくみであり、知らない人と話すことが苦手な人にとっても、形式に沿って動けば自然と交流が始まる設計になっています。

加えて、提供される料理やワインは、誰もが楽しめる共通の話題として機能します。

どんなに気難しい人でも、おいしい食事の前では、自然と会話も弾みます。こうした共有された状況が、初対面同士でも会話の糸口を見つけやすくし、「話し始めること」の心理的ハードルを下げてくれるのです。