経済格差の大きさと海外移住の関係

しかし、このように経済格差は縮小しているにもかかわらず、海外から主に就労のために来日し、定住している人たちの数は堅調に増えている。これは、多くの人々の直観――二国間の経済格差が大きいほど国際移住が増えるのではないか――に反する結果である。

こうした現象が起こっている理由は何なのか。本書では「国際人口移動」に関する歴史、データ、理論を用いて、この疑問に答えていく。あとで詳しく見ていくが、国際移住に関する最新の理論では、経済格差の縮小はある程度までは、むしろ国際移住への意欲を強めるとされる。

とすれば、今後も主に就労のために来日する外国人の数は増えていく見通しとなる。つまり、年間25万人やそれを超える外国人の入国超過のペースは今後も続く可能性が高い。このように、日本の将来人口の姿は主に「出生率」と「死亡率」によって決定されていたこれまでのあり方から大きく変化していく可能性が高いのである。

日本はまだ移民を受け入れられるのか

こういった変化は、日本社会にどういった影響をもたらすだろうか。それを検証するには、国際比較が有効である。

図表1は先進国における外国人人口の割合を示したものである。メキシコや日本のように総人口の1〜3%程度といった国から、ルクセンブルクの50%超まで先進国における外国人割合には大きな幅があり、その平均は14.7%である。ドイツ、フランス、英国、米国など日本と比較されることの多い国は10〜18%付近に集中している。

日本は現在3.0%である。仮に今後、将来人口推計が想定するように、毎年16.4万人の外国人の入国超過を経験し、外国人の割合が10.8%となった場合でも、先進国の平均値(14.7%)と比較すると、まだ3%ポイント強ほど低い水準にとどまる。また、仮に年間の入国超過数が25万人となった場合には15・1%と先進国の平均値(14.7%)とほぼ等しくなる。