そんな視聴者がいるとしたら、二流どころか三流の組織人である。

石原氏によれば、半沢の強さを見習いつつも乗り越えて、「超一流」を目指すには発想の転換が必要となる。

「復讐は倍返しではなく半返しぐらいがちょうどいいのではないでしょうか。もっといいのは、お世話になった人に恩を倍返しすること。相手は『こいつにはもっと何かしてやろう』と、いいことがさらに倍になって戻ってくるかもしれません。半沢直樹も役に立たなそうな若手の部下でもちゃんとフォローして、その部下から助けられていますよね。いい連鎖です。半沢は恨みだけではなくすべてに対して倍返しができる人間なのだと想像します」

とはいえ、悪意のある上司がいる職場に毎日通うのは辛い。なんとか状況を変えたい。仕返しもしたい。

「仕返しをしても辛い状況は変わりません。むしろ悪化するでしょう。復讐ばかり考えている人はやることがせこくなります。つっけんどんな返事をしたり、メールの返信を遅らせてみたり」

上司ばかりか職場全体からの評価も悪くなってしまいそうだ。ではどうすればいいのか。

「嫌な上司の味方のフリをして、『こうしたほうがあなたの評判がよくなりますよ』と具体的に提案するんです。心の中では『倍返しだ!』と言ってもかまいません。憎しみをバネに穏やかに行動しましょう。上司からすれば、いじめようとしたヤツが生き生きと働いていることになります。楽しそうにしているのが最大の復讐なんですよ」

半沢の潔さとしたたかさを見習って一流になるか、「恨みではなく恩義の倍返し」で超一流を目指すのか。組織人として大成するか否かの分かれ道だ。