例えば、「干す」と「乾かす」という言葉の使い分け。似ているようで、微妙に違う。晴れた日には布団を「干す」。一方、濡れた千円札をガラス窓に貼り付けて乾燥させる場合は「乾かす」かもしれない。
同じ布団でも、おねしょをしたのをそこだけ乾燥させるのはどちらかといえば「乾かす」かもしれない。このように、言葉の使い分けは、微妙なフィーリングに基づいている。時には、人や地域によって、結論が異なる場合もある。
英語も同じこと。ネーティブは、いちいち文法的にどうだからと考えて言葉を使っているのではない。なんとはなしのフィーリングで、表現を選択する。なぜそうなのかと問われて初めて、脳の遅い、しかし正確なプロセスが立ち上がる。フィーリングで選んだ表現の理由を説明しようとすると、苦労することも多い。
日本人が英会話を苦手とする理由の1つは、「考えすぎ」。TOEICなどのテストで、正解を出そうと理屈で考える訓練は受けているが、フィーリングで、迅速に言葉を選んでいく経験が足りない。
日常会話の現場では、いちいち考えていては間に合わない。文法的にこうだからと会話を組み立てていては、もどかしいし、テンポもおかしくなる。むしろ、必ずしも正確ではなくても、臨機応変に言葉を発していったほうがいい。
日本人が英会話を上達させる方法。それは、ずばり、「なんとなくこう」というフィーリングを鍛えること。「正しい」「正しくない」の文法知識よりも、「気持ちがいい」「語感がいい」というフィーリングこそを身につけよう。
そのためには、ひたすら英文に接するしかない。たくさんの絵を見なければ目利きになれないように、多くの英文に接しなければ、英語のフィーリングは鍛えられない。つまりは、地道に英語に向き合い続ける以外にないのである。