航空会社が注目するミドリムシの可能性

【田原】それはすごい。ミドリムシが食料問題を解決するという意味がやっとわかった。もう1つ、エネルギーについても聞きたい。エネルギーに関しては、原発の事故があって原子力にかわるエネルギーがテーマになっています。でも、太陽光や風力といいつつ工程表さえできてないから、先の選挙では野党が負けてしまった。ミドリムシは石油にかわるエネルギーになるのですか。

【出雲】いま注目が集まっているのは、飛行機の燃料になるからです。

【田原】バイオ燃料ですか。かつて、自殺した松岡利勝という農水大臣が、木からバイオ燃料をつくろうといっていたこともありましたね。

【出雲】はい。植物からバイオ燃料をつくるのは簡単で、木からガソリンをつくることもできます。ただ、ヒマワリやサツマイモやトウモロコシから軽油やガソリンをつくることはできるのですが、灯油と飛行機のジェット燃料は、植物からつくるのは難しいのです。

【田原】どういうことですか。

【出雲】動植物からつくれる燃料は、クジラからロウソク、ヒマワリから軽油、サツマイモからガソリンとあります。ただ、ジェット燃料はどの植物からつくるよりもミドリムシからつくったほうが効率的です。

【田原】つまりジェット燃料は動物からつくりやすいと。

【出雲】そこで白羽の矢が立ったのが、植物でもあり動物でもあるミドリムシです。光を当てないで動物のように育てると、植物にはつくれないオイルがミドリムシのなかにできます。

【田原】石油のかわりになるエネルギーはほかにもある。たとえば車は水素電池でも走る。水素電池じゃダメですか。

【出雲】モーターの先に車輪をつけて水素電池で回せば、車は動きます。モーターの先がスクリューなら、船が動く。では、モーターの先にプロペラをつけたら……。ジェット機からプロペラ機になってしまうので、いまより遅くなりますね。だから航空会社がバイオジェット燃料に注目しているのです。

ユーグレナ社長 出雲 充
1980年、広島県生まれ。東京大学農学部卒業後、東京三菱銀行に入行も1年で退社し、2005年、ユーグレナ設立。同年12月には世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功。12年、Japan Venture Awards「経済産業大臣賞」受賞、世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
【関連記事】
資源小国ニッポンを救う「エネルギー」の潮流
シェールガスの対日輸出解禁、ガス価格は下がるのか
「原油ウォーズ」日本が中国を出し抜く秘策
メタンハイドレートは「厄介もの」から時代の「寵児」へ
日本の石炭火力技術はCO2削減の切り札