日本政府は「新・国家エネルギー戦略」で2030年までに自主原油比率を40%まで引き上げる目標を掲げた。この目標を達成するには、日本は中東諸国に対して技術協力を展開することが不可欠であると筆者は説く。

 

出光興産、三井化学
合弁会社設立のもう一つのルーツ

昨年掲載された拙稿「資源開発競争に勝つカギ『コンビナート高度統合』」(http://president.jp/articles/-/1752)のなかで、最近石油業界で生じた(1)新日本石油と新日鉱ホールディングスによる「経営統合に関する基本覚書」の締結、(2)ベトナムでの出光興産・三井化学・クウェート国際石油・ペトロベトナムによる合弁会社「ニソン・リファイナリー・ペトロケミカル・リミテッド社」の設立、という2つの注目すべき出来事は、いずれも、コンビナートでの石油精製企業や石油化学企業の高度統合(いわゆる「コンビナート・ルネサンス」)をルーツとしていた事実を明らかにした。

このうちの(2)には、じつは、もう一つのルーツがある。それは、(財)国際石油交流センター(JCCP)が展開してきた中東における産業基盤整備事業(技術協力事業)である。

(2)のプロジェクトは、ベトナム北部に出光興産と三井化学の技術によって製油所・石油化学工場を建設し、そこでクウェート産原油を処理して得た製品を、ベトナム国内および中国南部で販売しようという、グローバルな内容をもっている。近年の石油市場では、原油価格の乱高下とともに、重軽格差(重質原油の軽質原油に対する相対的低価格)の拡大も問題となった。重軽格差の拡大にともない、国際的には相対的に重質である中東産原油のなかでもとくに重質であるクウェート産原油は、国際競争上、不利な立場に立たされることになった。石油市場では、世界的に、消費面で軽質製品のウエートが高まり続けている(いわゆる「白油化」の進行)から、クウェートにとって、この問題は深刻さを増していた。一方、出光興産をはじめとする日本の石油精製企業は、重質原油を軽質化する技術を有している。

これらの点をふまえて、クウェートでは、JCCPの技術協力事業として、出光興産が中心となって、重質原油の直接改質プロジェクトが遂行された。今回の(2)のプロジェクトは、このクウェートでのJCCPの技術協力事業を、もう一つのルーツとしているのである。