米国の財政赤字は2009年度に1兆7500億ドル(約170兆円)に拡大することが明らかになった。日中の金融協力によって、米国の膨大な財政赤字を賄うことができると筆者は説く。
オバマ大統領は財政赤字を半減できるか
今回は、アメリカの財政赤字に対して、サムライとパンダが手を組もうという話である。サムライとパンダが手を組もうというのは、パロディー映画のなかでは(例えば、『ラストサムライ』の侍たちと『カンフー・パンダ』のポーが手を組んで黒船と戦うことは)ありそうだが、実際にアメリカの財政赤字に対してサムライとパンダがどうやって手を組むのであろうか。
去る2月24日に麻生首相がアメリカ・ワシントンDCに出かけていって、ホワイトハウスでオバマ大統領と初の首脳会談を行った。その首脳会談では、世界金融危機および世界同時不況への対応策が議論された。そのなかで麻生首相とオバマ大統領が合意したことのなかで一つ気になることがある。それは、「基軸通貨たるドルの信認を維持することが重要である」ということで両首脳の意見が一致したことである。というのも、同日(2月24日)のオバマ大統領による議会演説のなかで、オバマ大統領の任期中、2013年までに財政赤字を半減させる目標を掲げたこと、そして、その翌々日の2月26日にオバマ大統領が予算の基本方針のなかで米国の財政赤字拡大を発表したタイミングに呼応しているからである。
その予算の基本方針によれば、09年度に財政赤字が1兆7500億ドル(約170兆円)に拡大することが明らかにされた。これは、08年度の財政赤字額4590億ドルの4倍弱に相当する。また、財政赤字額1兆7500億ドルは、アメリカの対GDP比で12.3%に達する。「双子の赤字」が問題視され、プラザ合意の下でドルが半分近くの価値に暴落した1980年代後半におけるアメリカの財政赤字が対GDP比で4%程度であったことと比較すると、09年度の財政赤字が対GDP比で12.3%というのは、当時の3倍にも達する。ちなみに、08年度の財政赤字額4590億ドルは、対GDP比で3.2%ほどである。
90年代後半から拡大し続けてきたアメリカの経常収支赤字の基本的な背景が、アメリカ民間部門の貯蓄不足にあったことを考慮に入れると、対GDP比で12.3%の財政赤字を国内貯蓄で賄うことは難しそうである。確かにアメリカ発の金融危機の影響を直接に受けているアメリカ経済では、これまでの過剰消費が縮小し、貯蓄率が上昇する可能性がある。
また、このような動向を根拠にアメリカの経常収支赤字が縮小すると予測しているエコノミストも多い。しかし、08年度の財政赤字が対GDP比3.2%であったものが、09年度にはそれが12.3%に上昇するという、この財政赤字9.1ポイントの増加に対して、同じ大きさの消費の減少・貯蓄の増加および投資の減少が起こりうるというのは疑わしい。もしこの財政赤字増大と同じ大きさだけ消費と投資が減少しないのであれば、アメリカの経常収支赤字はさらに増加することになる。そして、それほど大きく増加することが期待できない国内の貯蓄では4倍弱に増大する財政赤字を到底賄えないことが予想される。