不況の時代、経済の構造改革にとって重要なのは「創造的瞬間」の概念であると筆者は説く。ダイエー創業者・中内功の創業当時の苦悩から、その概念を明らかにする。

世界に類のない業態「SSDDS」はいかに誕生したか

一瞬の経験を境に、様変わりの躍動を生む。事故で両足を失った人が水に入ったとき、つい足があった頃の動きをして泳ごうとする。しかし、バタ足はできなくなっているので、自由形の泳法では溺れてしまう。そこで、彼に新しい工夫が必要になる。水の中で悪戦苦闘するなかで、横泳ぎに似た横滑りの泳ぎ方を習得する。

その瞬間は、まさに「創造的瞬間」である。「時間の流れが一瞬止まり、ある空白の時間が流れた後、今まで自分を縛り付けていたフレームの力が弱まり、逆に内的な創造性や連想力が活性化される」(森俊夫「未来の想起」、現代思想、vol25-12)その瞬間だ。われわれにも、考えてみればそうした経験はある。それは、運動面ばかりではなく、思考面においても現れる。