中国にはなくて日本にはあるもの「技術力」

このような状況をふまえれば、中東産油国が日本に期待するものを正確に把握し、それに適切な形で対応することは、わが国のエネルギーセキュリティ上、必要不可欠な施策だといえる。長いあいだ、中東産油国にとって日本は、魅力的な市場であった。この点は、今でも変わりはないが、中国などの強力なライバル(原油輸入面での競争相手)が登場した昨今、それだけでわが国が、中東諸国の心をつなぎとめることはできない。中東産油国が日本に期待するもの、そして中国にはなくて日本にはあるもの、それは、端的に言えば技術力である。

JCCPなどの長年にわたる努力によって、日本と中東諸国とのあいだには人的なネットワークが構築されつつある。中東諸国が、日本のエネルギーセキュリティにとって死活を制する重要性をもつという冷厳な事実は、これからも長期にわたって変わることがないであろう。

そうであるとすれば、日本はクウェート等の中東諸国の期待に応え、互いにウイン・ウインの関係をつくることによって、石油や天然ガスを安定的に確保する必要がある。そのためには、わが国は中東諸国に対して、石油精製・石油化学分野での技術協力、雇用創出につながる直接投資、水問題等の環境問題を解決するための技術協力などを多面的に展開していく必要がある。

(平良 徹=図版作成)