中東でのJCCPの技術協力事業が、その後、発展をみせた事例はほかにもある。サウジアラビアで取り組んだHSFCC(High-Severity Fluid Catalytic Cracking、高過酷度流動接触分解技術)は、その成果をふまえて新日本石油が水島で実用化へ向けた準備を進めており、技術協力のパートナーであるサウジアラムコ(サウジアラビアの国営石油会社)からも強い期待が寄せられている。また、アラブ首長国連邦で推進した製油所のゼロガスフレアリングは、コスモ石油へのIPIC(International Petroleum Investment Company、アブダビ政府が全額出資する国際石油投資会社)の20%出資を実現させる一つの促進要因となった。日本の石油業界では、中東発のビジネスモデルが目立ちつつあるということができる。
湾岸諸国の水問題に対する強い危機感とは
筆者は、今年の2月、JCCPとクウェート科学研究所(KISR)が共催し、クウェート国営石油会社(KPC)が協賛してクウェートシティで開催された環境問題の国際シンポジウムに参加し、基調報告を行う機会があった。JCCPがKISRと共催してクウェートで環境シンポジウムを開くのは四回目であり、ほかの湾岸諸国や日本での開催分を含めると、通算17回目の国際環境シンポジウムだという。
シンポジウムでは、日本および湾岸諸国(クウェート・サウジアラビア・バーレーン・カタール・アラブ首長国連邦・オマーン)から集まった19人の専門家が有意義な報告を行い、文字通り活発な討論が展開された。参加者も200人を超え、地元の新聞やテレビも大々的に報道して、シンポジウムは成功裏に終了した。KISRの関係者によれば、このシンポジウムは、今年、同研究所が予定している種々の会合のうちで、最大規模のものだそうである。
このシンポジウムに参加して強く印象に残ったのは、日本と湾岸諸国のあいだには、濃密な人的ネットワークが着実に構築されつつあることである。日本サイドと湾岸諸国サイドとの共催による環境問題に関する国際シンポジウム(湾岸諸国環境シンポジウム)は、(財)石油産業活性化センター(PEC)によって、17年前の1992年に開始された。この活動は2001年にJCCP(81年設立)に継承されたが、JCCPは、それとは別に、産油国を中心にして、年間1000人弱規模の石油産業関係者(エンジニア等)を受け入れ、日本で研修活動を行っている。
最近では、中東諸国からの受け入れ人数も増え、その延べ人数は4320人に達する。また、JCCPは、中東地域へ、延べ1249人にのぼる石油産業の専門家を派遣している。別表は、JCCPによる研修生受け入れ・専門家派遣の実績を、地域別にまとめたものである。この表から、01年以降、中東地域のウエートが拡大していることがわかる。