新日石と新日鉱ホールディングスの経営統合は、売上高13兆円超という世界メジャーの仲間入りを実現させた。この再編劇には「コンビナート・ルネサンス」の進展が作用していると、筆者は説く――。

 

経営統合合意の出発点となった
水島コンビナート

2008年には、日本の石油業界のあり方を変えるような大きな出来事が続いて起こった。

1つは、12月に発表された、新日本石油と新日鉱ホールディングスによる「経営統合に関する基本覚書」の締結である。この経営統合が実現すると、売上高で準メジャー級のイタリアのENIを上回る大規模石油会社が、日本に誕生することになる。そして、それは、国内の石油元売り業界のさらなる再編・統合を引き起こすきっかけともなるであろう。

もう1つは、4月にベトナムで、出光興産・三井化学・クウェート国際石油・ペトロベトナムの合弁会社として、「ニソン・リファイナリー・ペトロケミカル・リミテッド社」が設立されたことである。これは、ベトナム北部に出光興産と三井化学の技術によって製油所・石油化学工場を建設し、そこでクウェート産原油を処理して得た製品を、ベトナム国内および中国南部で販売しようという、グローバルなプロジェクトである。このプロジェクトが実行されると、日本の石油業界は、第二次世界大戦後長く続いた消費地精製方式の枠組みから脱却することになる。

ここで注目すべき点は、これら2つの出来事には、共通の要因が作用していることである。それは、「コンビナート・ルネサンス」と呼ばれるように、各コンビナートで石油精製企業や石油化学企業の高度統合が進展したという要因である。新日石・新日鉱の経営統合合意の出発点となったのが、06年に始まった水島コンビナート(岡山県)での両社製油所の一体的操業であったことは、想像に難くない。また、ニソン・プロジェクトは、ここ数年千葉コンビナートで進展している出光興産・三井化学間の多面的な事業連携の延長上に実現したと言っても、けっして過言ではなかろう。

日本においてコンビナート・ルネサンスが進展する契機となったのは、00年5月に石油コンビナート高度統合運営技術研究組合(Research Association of Refinery Integration for Group-Operation, 略称RING)が設立されたことである。RING発足によって始まった日本の石油精製企業と石油化学企業によるコンビナート統合の動きは、00~02年度の第1段階(RING・I)および03.05年度の第2段階(RING・II)を経て、06~09年度には第3段階(RING・III)を迎えている。コンビナート・ルネサンスは、これまでのところ、RING事業の展開を通じて具現化してきたと言えるのである。