なぜ日本には高付加価値技術が重要なのか
コンビナートの高度統合は、石油・石化産業の国際競争力強化や地域経済の活性化に貢献するだけではなく、エネルギー安全保障の確保にも寄与する。日本のエネルギー安全保障確保のためには、省エネルギーのいっそうの推進、運輸部門における燃料の多様化などとともに、海外での石油・天然ガス資源の開発にも力を入れる必要がある。
ただし、資源開発競争は世界的規模で激化しており、そのなかでわが国が勝ち抜くためには、産油国・産ガス国が求める高付加価値技術、つまり石油精製技術や石油化学関連技術を提供する(場合によっては、産油国・産ガス国へ石油精製企業や石油化学企業が直接進出する)ことが重要になる。
日本国内で石油・石化企業の連携・統合が進み、国際競争力あるコンビナートが構築されれば、そこで得られた技術面での知見を、産油国や産ガス国でも、大いに活用することができる。そのことが、国際的な資源開発競争において、わが国にとって有利に作用することは、言うまでもない。原料使用のオプションを拡大し、石油留分や潜在的エネルギーを徹底活用するコンビナート高度統合は、技術資源の動員によって産油・産ガス国との関係を緊密化するという国家的課題の、重要な一翼を担っているのである。
ここまで見てきたように、コンビナート高度統合は、(1)日本の石油産業と石油化学工業の国際競争力を強化する、(2)地域経済の活性化に寄与する、(3)エネルギー安全保障の確保に寄与する、という3つの大きな社会的意義を有している。RING事業の展開によって軌道に乗りつつある日本でのコンビナート高度統合が、今後いっそうの進展を見せることを強く期待したい。
(平良 徹=図版作成)