基軸通貨という地位を現在もなお維持するドル

プレジデント2008年10月13日号に筆者が「『グレシャムの法則』から見た基軸通貨ドルの明日」というタイトルで文章を載せた。「ユーロの台頭、サブプライムローン問題の深刻化により、もろさを露呈するドル。それでもなお、基軸通貨の座を維持している理由とは──」という前文を付け、そして、その文章の最後に「ドルは、減価し続ける一方、国際貿易取引や国際金融取引において最も利用される基軸通貨という地位を現在もなお維持している」と書いた。

その後、9月のリーマン・ブラザーズ・ショックがグローバル金融危機に発展するにつれて、世界中の各国通貨の為替相場を大きく変化させるという影響をもたらしている。ドルが「国際貿易取引や国際金融取引において最も利用される基軸通貨という地位を現在もなお維持している」という背景から、グローバル金融危機のなかドルの減価は限定的なものとなっていて、むしろユーロや一部のアジア通貨が暴落する事態となっている。

図1と図2と図3を見ていただきたい。図1は、アジア通貨(ASEAN10カ国と日中韓の13通貨)の加重平均値を対ドル、対ユーロ、対ドルとユーロのバスケット(アジアの対米・対ユーロ圏の貿易ウエート)で表したアジア通貨単位(Asian Monetary Unit: AMU)の動きを示している。2000~01年のベンチマーク期間においてAMUの対ドル、対ユーロ、対ドル・ユーロのバスケットの為替相場を一としている。上方に推移すればアジア通貨が対ドル、対ユーロ、対ドル・ユーロで増価することを意味し、下方に推移すればアジア通貨が対ドル、対ユーロ、対ドル・ユーロで減価することを意味する。一方、図2と図3は、各アジア通貨がどれほどそのベンチマーク期間の水準よりも過大評価されているか、あるいは、過小評価されているかを表すAMU乖離指標の動きを示している。

図2には、最近、大きく減価しているアジア通貨の動きが示されている。一方、図3には、最近、増価しているアジア通貨の動きが示されている。これらのAMUおよびAMU乖離指標は、一橋大学グローバルCOEと経済産業研究所の共同プロジェクトとして毎週、データ更新が行われるとともに、ウェブサイト(http://www.rieti.go.jp/users/amu/index.html)に掲載されている。

※図は次ページ以降に掲載