アジア通貨による「対ドル」「対ユーロ」の非対称的な動きとは

図1:アジア通貨(AMU)の対外価値

図1:アジア通貨(AMU)の対外価値

図1を見ると、アジア通貨とドルとユーロの間の特徴的な関係が見られる。アジア通貨は、00年10月から03年6月にかけて、対ドル・ユーロで10ポイント減価した後、徐々に増加し続けてきた。08年10月末には、00~01年のベンチマーク期間の通貨価値水準に戻ってきている。このような穏やかなアジア通貨の動きを対ドルと対ユーロに区別してみると、アジア通貨の価値の変動以上に、ドルおよびユーロの価値の変動を反映した形で、これらが推移していることが見て取れる。

02年3月以降、ドルの全面的減価を反映して、アジア通貨は対ドルで08年3月まで増価を続けてきた。この間にアジア通貨はドルに対して20ポイント以上、増価した。しかし、07年8月のサブプライムローン問題の発覚(サブプライム・ショック)以降の円キャリー・トレードの手仕舞いの影響を受け、さらには、08年9月のリーマン・ブラザーズ・ショックの影響を受け、アジア通貨は対ドルで減価に転じている。逆に言うと、アメリカ経済がサブプライム・ショックおよびリーマン・ブラザーズ・ショックを受けたにもかかわらず、ドルはアジア通貨に対して増価に転じている。このことは、ドルがアジア通貨のみならず、ユーロやポンドをはじめとするヨーロッパ通貨に対しても増価に転じていることと共通している。

アジア通貨の対ユーロの推移を見ると、最近において、アジア通貨が対ドルで減価している以上にユーロが大きな減価をしていることが見出される。00年10月にアジア通貨が対ユーロで最高値を付けた後、04年12月までに40ポイント以上、対ユーロで減価した。その後、アジア通貨の対ユーロでの減価は小康状態になったものの、さらに徐々に減価し、リーマン・ブラザーズ・ショックの直前の08年7月には、00年10月時点の水準に比較して、50ポイント近く減価した。しかし、その後、リーマン・ブラザーズ・ショックを受けて、3カ月ほどの間に20ポイントもアジア通貨は対ユーロで増価することになる。

このように、アジア通貨が対ドル・ユーロに対しては比較的安定した動きとなっているにもかかわらず、アジア通貨の対ドルの価値と対ユーロの価値が非対称的となっているのは世界の通貨の動きが反映されている。とりわけ、サブプライム・ショックとリーマン・ブラザーズ・ショックを受けて、08年4月以降のアジア通貨の対ドルの減価および08年7月以降のアジア通貨の対ユーロの増価といった非対称的なアジア通貨の動きは、ユーロが対ドルでアジア通貨以上に大きく減価していることを反映している。グローバル金融危機において、ユーロが最大の影響を受けていることの表れである。さらに、ユーロ圏の周辺の通貨を見ると、そのいくつか(例えば、アイスランド・クローナ)はほとんど通貨危機に陥っている状態にある。