黒字なのに早期退職や希望退職を募集

黒字なのに早期退職や希望退職を募集する企業が増えている。東京商工リサーチがまとめた2025年1月~9月30日までに「早期・希望退職募集」をした上場企業は34社にのぼった。件数自体は前年同期の46社から26%減少したが、対象人数は1万488人と前年同期の8534人の約1.2倍に増加している。しかも、早期・希望退職を募集した企業のうち黒字企業が全体の65%を占めている。黒字なのに希望退職とは、いったい何が起きているのだろうか。

背景には大幅な産業構造の転換が起き始めていることがあると見られる。自動車がガソリンエンジン車からEV車へとシフトすることで、雇用の裾野が広がっている自動車関連業界の構造を根底から揺るがしているなど、これまで「雇用の受け皿」と見られていた業種・職種で将来的な人材余剰が見込まれている。産業構造の変化を先取りする形で人員整理に着手する企業が増えていると考えられる。

だが、それ以上に大きいのは、AI(人工知能)の進化と普及に伴う「ホワイトカラー」の削減だ。日本経済新聞は東京商工リサーチの8月までの集計を引用する形で、「2025年の早期退職1万人突破 はや前年超え、管理職年代の削減目立つ」という記事を掲載している。その原因を「人工知能(AI)時代を見据え、海外で先行する構造改革の動きが日本でも広がってきた」としている。

どういうことか。

海外企業で進む「AIに置き換え可能な業務」の削減

米国など海外企業の間では、AIの普及を背景に「AIに置き換え可能な業務」の削減が起きている。日経の記事は、米チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスの調査として、1~7月のテック企業の人員削減が8万9251人と前年同期より36%増えたことを伝えている。米マイクロソフトが全体の4%に当たる9000人の削減を決めたことなどが大きいという。

マイクロソフト(MS)のロゴ
写真=ロイター/共同通信社
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AIの台頭によりソフトウエア開発の分野で22~25歳の雇用が22年後半のピーク時から25年7月までに約20%減ったという、米スタンフォード大学デジタル経済研究所教授らの試算もある。プログラミングのコードを書く作業などはAIの得意とするところで、AIに代替されていると見られる。また、顧客からの問い合わせに応じるカスタマーサービスのオペレーターなどもAIに代替されている。電話での問い合わせへの対応がAI音声などに代わっていることは、日本でも体験するようになっている。