よかれと思って引き受けた仕事が、いつのまにか大きな負担に。なぜ、そんな「親切疲れ」に陥ってしまうのか。精神科医の藤野智哉さんは「自分と他者との間に健全な『境界線(バウンダリー)』を引くことが、自分を守るカギになる」という――。

「空気を読む文化」がバウンダリーの障害に

断るのが苦手で、職場でもちょっとした雑用を頼まれると、忙しいのについ引き受けてしまう。愚痴に付き合ったり、相談されることが多い。仕事の連絡が休日にもあって気が休まらない。意見の強い人に押し切られがちで、理不尽と思いつつ結局がまんしてしまう……。こうしたことに悩んでいるとしたら、あなたに足りないのは「人間関係に線を引く」ことかもしれません。

人間関係に線を引くという発想は、心理学では「バウンダリー」と呼ばれています。つまり、自分と他者の間にある、見えない境界線です。これができると「どこまで相手と関わるか」「どこから自分を守るか」を、主体的に決めることができます。