「健康寿命ランキング」で男女ともに全国トップの長野県。長寿の秘訣はどこにあるのか。長野県在住のフリーライター・ざこうじるいさんは「佐久総合病院では80年前からユニークな活動が続いている。この活動が医療者と住民の関係性を変え、地域の健康の支えになっているのではないか」という。現地からリポートする――。
写真=鷹野邦一さん提供(左)、筆者撮影(右)
 

健康寿命日本一の意外な秘訣

病気に苦しんだり、介護を受けたりせず、健康に長生きがしたい――。

人口のおよそ3割が65歳以上となり、「超高齢社会」となった今、誰もがそう願っていることだろう。要介護度をもとに算出された「健康寿命」の令和5年値で、長野県は女性が8年連続、男性が3年連続1位となった。

長野県はなぜ、健康に長生きができるのか。高齢者の就業率が高いことや、野菜の摂取量が多いことなどが要因としてあげられることが多いが、実はそれだけではない。

長野県によると、「専門職による活発な地域の保健医療活動」や「自主的な健康づくりの取り組み」が健康寿命を延ばしているという。

健康に長生きし(ぴんぴん)、楽に大往生(コロリ)を願って建立された「ぴんころ地蔵」がある長野県佐久市
筆者撮影
健康に長生きし(ぴんぴん)、楽に大往生(コロリ)を願って建立された「ぴんころ地蔵」がある長野県佐久市

これらを支える意外な秘訣が「劇」だ。

私が佐久総合病院の演劇に初めて触れたのは、2009年の5月のことである。高校の同級生から「研修医として劇をやるから」と誘われ、当時住んでいた東京から新幹線に飛び乗り、佐久総合病院の広場に向かった。

そこには、金髪ロン毛のかつらをつけ、作り物の胸を強調したナース服に濃いメイクをした同級生(男性)の姿があった。昨今のジェンダー的視点では不適切と言われるかもしれないが、私は思わず吹き出した。想像していた「研修医」の姿とはまるで違ったからだ。

2009年、筆者が初めて鑑賞した研修医劇のメンバーたち。同級生は一番下。
写真提供=座光寺正裕さん
2009年、筆者が初めて鑑賞した研修医劇のメンバーたち。同級生は一番下。

高校時代は隙がないイメージだった彼が、地域の人たちの前で体を張って笑いをとっている。お堅い印象はガラガラと崩れ、彼の人間的な一面に触れた気がした。

「なぜ医者が演劇を……?」

このときはまだその理由をうまく理解できなかったけれど、楽しそうな研修医たちのことが印象に残った。そして結果的にこのときの出来事は、私自身の人生を大きく変えることになった――。