アメリカで「Liquid Death(死の水)」と呼ばれるミネラルウォーターが若者の心を掴んでいる。健康的な水にあえて不健康なイメージを与えるという逆転の発想で、2017年創業の飲料メーカーは右肩上がりで成長を続け、昨年492億円の売り上げを達成。海外メディアは異例のマーケティング戦略に注目している――。

ドクロマークの水が音楽フェスで大人気に

黒地に白く描かれた、おどろおどろしく溶けてゆくドクロのロゴ。「Murder your thirst(渇きを殺せ)」という過激なスローガン。これがただの水の缶に描かれているのだから、誰もが二度見してしまう。

アメリカやイギリスのZ世代の若者たちを虜にしているこの缶飲料の名前は、「死の水」を意味する「リキッド・デス(Liquid Death)」。英ガーディアン紙によると今夏の音楽フェスティバルでは、この物騒な名前の缶飲料を持ち歩く姿が目立ったという。

500ml缶に入ったこの商品は、ビールやエナジードリンクを思わせるデザインだが、中身は純粋なミネラルウォーターだ。米スーパーチェーンのターゲットでは、500ml缶が1缶あたり1.89ドル(約280円)で販売されており、水としては決して安くはない。

一風変わった商品だが、「リキッド・デス」ブランドへの愛着はエナジードリンクにも迫る勢いで高まっている。現在同ブランドはティックトックとインスタグラムで、合計1400万人以上のフォロワーを獲得。米アトランティック誌は昨年3月時点ですでに、レッドブルとモンスターエナジーに次ぎ、飲料ブランドとして第3位の座を占めていたと指摘している。

毎年3桁成長を続ける「死の水」

リキッド・デスは独立系ブランドとして、2017年に創業した。ガーディアン紙は昨年、「特に革新的な商品を売っているわけではないにもかかわらず」同社が10億ドル(約1500億円)以上の企業価値を有し、2023年の世界売上高が2億6300万ドル(約390億円)に達したと報じている。

米食品業界メディアのフード・インスティテュート誌によると、リキッド・デスは2024年に3億3300万ドル(約492億円)の売上を記録し、前年から26.6%増加した。だが、これも控えめな数字だ。2019年の販売開始から2023年までは、毎年3桁の成長率を維持してきた。

この成功は業界でも注目を集めた。ファストカンパニーは毎年発表する「世界で最も革新的な企業」の2025年版で、リキッド・デスを50社中43位に選出。水というどうにも捻りようのない商品で、これほどの革新性を認められることは極めて異例だ。