経営者としての向き不向きをあぶり出す名著
『プロフェッショナルマネジャー 58四半期連続増益の男』(以下、『プロフェッショナルマネジャー』)は「優れた経営者とはこういうものだ」という、簡単には変わらない成功の本質が凝縮された一冊です。時代や国、業界が違っても、経営者として目指す「山の頂」は普遍なのだと、改めて気づかされます。
僕はもちろん、著者ハロルド・ジェニーン氏に直接お会いしたことはありません。しかし、本書は目の前にいる著者と対話しているかのように読むことができます。
この本で著者が語りかけてくるのは、「そもそも経営者の仕事とは何なのか?」という問いへの答えです。優秀な担当者や特定分野のスペシャリストだったとしても、必ずしも経営者として成果を残せるわけではありません。経営者と担当者のあいだには、大きな非連続性があります。
ジェニーン氏は、会社や事業を“商売の塊”と捉え、そこで成果を出すことこそが経営者の唯一の使命だと語ります。明確に因数分解できない「組織という全体」で、どうすれば成果を出せるのか。その要諦を徹底的に掘り下げているのです。
世の中には「リーダーシップ」や「経営ノウハウ」を謳うビジネス書が数多くありますが、実際には、特定分野の優秀な担当者――いわば“スーパー担当者”の成功事例にすぎないものも少なくありません。その点で『プロフェッショナルマネジャー』は、紛うことなく経営者としての向き不向きをあぶり出してくれる貴重な一冊だといえます。
柳井氏の経営概念を180度変えた
『プロフェッショナルマネジャー』は絶版となっていましたが、2004年にプレジデント社から復刻刊行されています。きっかけはファーストリテイリングの柳井正CEOが「自身の経営概念を180度変えた一冊」と編集者にすすめたことにはじまります。復刻にあたっては、柳井氏自らがプロローグと解説を書いています。『プロフェッショナルマネジャー』の原題は『Managing』。辞書を引くと「get things done through others(他者を通じて物事を成し遂げる)」という意味です。経営者といえども一人でできることはたかが知れています。事業に関わるたくさんの人に動いてもらい、その集積として高い成果を出す流れをつくる。結局は、経営は人間を相手にする仕事です。


