※本稿は、伊庭正康『リーダーの「任せ方」の順番 部下を持ったら知りたい3つのセオリー』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
プレッシャーに追い詰められた優秀な営業の末路
「やったふり」と「不正のワナ」を予防する
私がリーダー研修で、必ず伝えている法則があります。それは、「心理的安全性がない職場では、人は本音を隠し、やったふりをする」ということ。心理的安全性とは、誰が何を言っても“安心・安全”が保証されることを指します。
あなたの職場を見渡してください。
帳尻を合わせるような、報告やレポートはないでしょうか?
もちろん、プレッシャーを感じることは大事です。
ただ、それは心理的安全性が担保されてこそ。
さもないと、「やったふり」が、あなたの知らないところで横行します。
これがエスカレートすると、中には超えてはいけない“改ざん” “虚偽”などの「不正」に足を踏み入れる人も出てくるのです。
生々しい話をしますね。もう、時効になった話なのでOKでしょう。
私が若手課長として、ある会社に出向した時のことでした。
その時、“優秀な営業”として紹介されたのがHさん。
Hさんは、主要な顧客を任され、大きな目標を課されていました。
しかし、私は、すぐ違和感を持ちました。
なぜか、複数の顧客からの入金が数日、遅いのです。彼女の顔色もどこか悪い……。
私が直接、顧客に確認をしたところ――
彼女が顧客に代わって、自分のお金で賄っていたことが発覚しました。「架空受注」です。
その額は800万。消費者金融で借りて払っていました。
会社での事情聴取でHさんは、こう言ったそうです。
「目標を外すわけにもいかず、責任を感じて、ついしてしまった」
Hさんが架空計上に手を染めたのは、私の前任課長の時でしたので、私は懲戒になることはなかったのですが、前任課長は、厳重注意の懲戒処分を受けることに。
理由は、管理不行き届きでした。そして、Hさんも自主的に退職することに……。

