※本稿は、シンシアリー『韓国リベラルの暴走』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
景気が悪いのに「日本より賃金が高い」?
最近、韓国では賃金が日本より高くなったという趣旨のデータが話題になっています。1人あたりGDPで日本より高くなったとか、大企業平均賃金で日本より高くなったとか、そんな話です。
しかし、韓国経済そのものはとてつもない不況で、個人回生(個人破産の一つで、日本の「個人再生」と似ている制度)が急増したとか、自営業者の廃業が年100万人を超えているとか、そんなニュースで溢れています。
なぜでしょうか。実際に韓国を訪れた方なら観光地以外、いや「観光地でも」、あまり活気がないと感じる方が多いでしょう。
2025年5月、毎年の親の墓参りのために韓国を訪れたときのことです。日本への「帰国」(この単語を書くたびに神様に感謝しています)の日、去年までは予約なしでも乗ることが出来た空港バスが、完全予約制になったとのことで、仕方なくタクシーに乗って空港へ向かいました。
タクシーの運転手の方とずいぶんいろいろ話しましたが、「こんなに景気が悪いのは本当に初めてです」とのことでした。そして、「早く大選(大統領選挙)が終わらないと……」とも。
どちらが大統領になっても未来はない
興味深いのは、いつもは「今回の大統領選挙で○○さんが勝てばいいのに」と言うはずなのに、「大統領選挙が終わればいいのに」というふうに話していたことです。韓国人は政治の話が好きで、政治とは無関係の会話でも、いつのまにか政治の話になっていたりします。その際、「○○が勝たなければならない」というふうによく話します。
すごく喧嘩になりやすいテーマですが、支持者としてのなにかの責任感のようなものでしょうか。よくこんな話になります。それが今回は、「終わればいい」という話になっているのが、面白いと思いました。ひょっとすると、これといって支持する候補がいないのでしょうか。とりあえず選挙が終わって、誰が勝ってもいいから経済関連政策を打ち出してほしい、という心理なのでしょうか。
そういえば前回の大統領選挙で尹錫悦候補と李在明候補が競ったときも、「エイリアン対プレデター(映画『AVP』の韓国タイトル)」という皮肉がネットでヒットしたりしました。その映画の宣伝フレーズが、「どちらが勝っても、人類に未来はない」でした(日本では「勝手に戦え」)。どちらが大統領になっても、いいことはないという皮肉として、そのフレーズがぴったりだったわけです。

