※本稿は、和田秀樹『70歳からの老けないボケない記憶術』(ワン・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
情報の上書きが記憶をさまたげる
記憶は、起きている間じゅうどんどん上書きされています。自分で取り入れた情報はもちろん、意識しないうちにも脳は情報を勝手に取り込んでいます。
じつは、この膨大な上書きによって、脳は記憶を想起しづらくなるというやっかいな現象が起こります。これを「逆向抑制」といいます。
心理学の実験では、記憶が上書きされない睡眠中には想起できることが減らないという結果も出ています。
人生経験が長いほど上書きの量も増えていくわけですから、それまで覚えてきたことの想起はさらに困難になっていくといえるでしょう。
逆につらい体験をしても、その後よい環境に恵まれればその体験を思い出さなくなったり、誤った情報をインプットしても、正しい情報に上書きできたりするように、人間が健全に生きていくために必要な機能であるともいえます。
では、「逆向抑制」を軽減するにはどうしたらいいのでしょうか。
じつは4つの対処法があります。ひとつひとつ見ていきましょう。
(1)脳内の神経回路は相互に関係しているため、情報を続けざまに送ってしまうと記憶が定着しにくくなります。
ですから、数回に分けて記憶するようにします。
たとえば、試験勉強などでは2時間続けて暗記するより、1時間ずつ2回に分けて暗記するなどの工夫をすると覚えやすくなります。時間の使い方として、途中でインターバルを設けることで気分転換にもなるでしょう。
(2)また、繰り返しインプットする「復習」という記憶法も(1)と同じ原理です。 一度インプットした後、少し間隔を空けてからもう一度インプットすることで記憶は補強されるのです。
(3)そして何より心がけたいのは、意識して書き込む情報については、とにかく「よけいなこと、無駄なことは覚えない」ということです。
入力の段階で、使える知識だけを記憶するために情報の取捨選択を行うのです。
(4)知識の豊富な人になりたいからといってやみくもに情報を詰め込んでも、想起できる状態で頭に残しておかなくては記憶する意味がありません。
「入力情報は少なく、それでいて頭に残る知識は多く」というのが理想的な記憶といえるでしょう。

