「家にたくさんの本がある環境で育った子供と、家に本など一切なくテレビとゲームしかない環境で育った子供を考えてみてください。家に本があれば、自然と子供は手を伸ばします。また、親が毎日1~2時間読書をしたり、勉強をしている姿を子供が見ていれば、それが当然のこととして子供の習慣にもなるでしょう。これに対し、ビールを飲みながらテレビで野球観戦する姿しか子供に見せなければ、家ではダラダラ過ごすのが当たり前、となりますよね。高学歴の家庭では往々にして、子供が学習に親しみやすい“環境”があるものです。そうした環境の影響が、まるで遺伝しているかのように見えるだけなのです」

つまり頭のいい男女が結婚したからといって、秀才が生まれるわけではない。その逆もまた真なり。一方、遺伝子が違うせいで、集中力に差が出るのではないかという仮説も、いまだ根強いという。

「脳にはアセチルコリン受容体というタンパク質があります。アセチルコリンは神経伝達物質で、前頭葉の大脳皮質でものを考えたりするときに働き、その伝達がよくなれば集中力が増す効果がある。アセチルコリンがなくなると認知症が進みますので、これが知的能力に効いていることは確かなのです」

アセチルコリンは脳の中の神経細胞から分泌されると、受容体(レセプター)といって必ずくっつく相手がいて、鍵と鍵穴のように結合する。この2つが結合してアセチルコリン受容体がオンになると神経伝達が行われる仕組みになっているという。

「このアセチルコリン受容体によって集中力が違ってくるのではないかというわけです。論理的には正しい仮説ですが、頭のいい人と悪い人の遺伝子を調べても、『ここが違う』と特定できるものはないのです」

では、集中力も遺伝より環境による影響のほうが大きいとしたら、どのような環境がいいのだろうか。

「小学校に入る前から、机に向かってじっと座っていられるようにする必要があります。お父さんやお母さんが本を読み上げて、じっと聞く姿勢を身につけさせるのも効果があります」

子供自身が面白いと思えるもの、興味がひかれるものを見つけさせることも重要だという。