「各教科、英数国理社について調べた研究者がいますが、たしかな影響は見られませんでした。『数学くらいは遺伝の影響があるのでは』と仮説を立てて遺伝子を調べても、データには表れないのです。しかも、今の高校生や大学生のIQテストの結果を見ても、男女の差は出てこない。かつては、家庭の中で『男なんだから数学ができないといい学校へ行けないぞ』『女の子がそんなに勉強をすると結婚できないぞ』などといって育てられるケースがあったため、男女で差があるように見えていただけなのではないでしょうか。もちろん、理系が得意だった親だから子供も理系が得意ということもありません」

もう1つ、遺伝にまつわる話として、スポーツや芸術はどうなのか。スポーツの世界では2世や3世が活躍することが珍しくない。日本の伝統芸能はじめ芸術分野でも代々受け継がれるケースは多い。

「走る能力については、ある遺伝子で決まっているのではないかと信じている人が少なくありません。しかし私は、それは正しくないのではないか、いろいろな遺伝子が組み合わさることによって、ほんの少しの違いがあるだけではないか、と考えています。音楽については、少なくとも音痴の遺伝子はありません。そのほか、基本的に芸術の遺伝子はないと考えていいでしょう。いかに小さいときから親しませるかのほうが重要です」

さて、子供の性格を見ていると、まるで自分を見ているかのようで、頭のでき以上に気がかりな部分がある。最後に、性格や気質についてきいてみた。

「これは半分遺伝するといわれています。ただし、たった1個の遺伝子で決まるわけではありませんので、そう単純なものでもありません。また、性格は年を重ねるとともに、経験によって変わっていくこともわかっています。だから、ある人のその時点での性格は説明できても、その人の一生を見たら、どういう性格だったかと明確には説明できないものなのです。IQテストは何歳で受けてもあまり結果は変わりませんが、性格テストはその時々で変化します」

なんともホッとしたようなしないような……。とにかく、家庭の環境や親の振る舞い、子供との接し方を見直したほうがいいことだけは確かなようだ。

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