情報開示:決算書だけでは融資の可否決まらぬ

粉飾は必ず見抜かれる/12年8月現在、法制審議会による会社法の改正作業が大詰め。焦点は企業統治のあり方。(PANA=写真)

11年に発覚したオリンパス事件では、90年代のバブル崩壊で多額の損失を出したオリンパス経営陣が、20年近くにわたり粉飾決算を続けていたことが、世間から強い非難を浴びた。

法制審議会による会社法の改正作業においても、こうした問題をいかに防いでいくかという企業統治のあり方が議論の対象となった。

企業の信用を守るうえで大切なのが、不都合な事実も隠さずオープンにする、情報開示の姿勢である。これは融資にも当てはまる。

中小企業の場合、銀行から融資を断られることを恐れるあまり、本当は赤字決算なのに数字を取り繕って黒字に見せかけたり、債務超過となっている事実を隠蔽しようと、資産性のないものを資産として計上したり、といった粉飾決算を行う例が後を絶たない。

銀行員は「決算書の粉飾を見抜けるようになったら一人前」とも言われ、粉飾には慣れている。融資審査のために提出された決算書の内容は細部までチェックされ、粉飾された決算書のほとんどはそこで見抜かれて、銀行側の不信の原因となってしまう。

単年度の決算が赤字となった場合も、貸借対照表で債務超過に転落した場合も、その原因を経営者がしっかり認識し、どう対処するかという戦略を立てていれば、融資打ち切りにはつながらない。むしろ都合の悪い事実を正直に開示する姿勢に好感を持ち、それが金融面でのバックアップに結びつくことも多い。ほとんどの経営者が「融資の可否は決算書だけで決まる」と思い込んでいるが、そうではないことを知っておくべきだろう。